ちゃっかりしてるなぁ、と苦笑して。
商人ではないなりに知恵を絞るべく、アムルイはしばし考え込んだ。
その沈黙の後に、彼女はこう問うた。

確かめるように言って、アムルイは言葉を続ける。

それは意外と経済の本質を突いた疑問でもあった。
ただ金があれば豊かなのかと言えば、それは否である。
どんなに金があっても、消費することができなければ意味がない。
金を充分に使うことができて、初めて豊かであると言えるのだ。

そこで一度言葉を切り、アムルイは深く息を吸った。
考えを整理するために、間を置いたというのもあるだろう。
しかし彼女はまだ、お代は何かという君の問いに答えていない。
今までの話を前置きとして、彼女は問いに答えようとしているのだ。

それは当然と言えば当然のことだろう。
より豊かになるために、物も人も流れて行くに違いない。

市場が一つなら、考えるのは物を運ぶことだけでいい。
特に為政者の視点で言えば、上手く回るように物と富が配分できていればいいのだ。

そうして時に偏ったりもしながら、各国の経済は発展するとアムルイは言う。
確かにそれは、そうなのかもしれない。
市場が一つしかないということは、ある程度までは努力を放棄できるということだ。
しかし複数の市場があれば、胡座をかいているわけにもいかない。
競争にさらされた経済は、発展することを義務付けられるのだ。

それはアムルイ自身が、何かを払うというわけでない。
ここまで豪快な空手形も珍しいだろう。
だが新しい市場と経済圏に備えていれば、大儲けの商機はやってくる。
備えが不充分でも、商人であれば商機は必ずや訪れるだろう。