契約してるエンブリオもちょっと増えてきたけど、
ポピーちゃんもブランちゃんもちょっと変わってる気がする。
良く言えば個性的だけど。
帰ったらお兄ちゃんも驚くだろう。

ポピーちゃんはとにかくものを舐めるのが好きみたいだった。
私の靴とかその辺の岩とか、サンドちゃんのことは特にしつこく舐める。
サンドちゃんはそのことをあまり気にしていないけど。
何を考えているのかは分からないけど大人しいしいい子だとは思う。

ブランちゃんは他のエンブリオより人に興味があるように見える。
時々ふらっと居なくなったかと思えばひょっこり戻ってきて私の顔の前で不規則に光ったりしていた。
みんなのことも気になるようで、やっぱり足元や肩口を飛び回ったりしながらちかちか光る。
何か伝えたいのかもしれないけど、もしそうならあの時みたいに喋ればいいのだ。
ブランちゃんは本当によくわからない。

サンドちゃんは相変わらず黙ってただ付いて来てくれる。
この子は昔からそうだった。
何かを訴えようともしないし、何かに興味を持つこともあまり無い。
ただじっと私の目を見つめてくる。
何も考えていないようにも見えるけど、ソフィさんはサンドちゃんをとても賢くて偉いエンブリオだと言っていた気がする。
ずっと一緒に居るのにサンドちゃんのことは何も分からない。
私が訊いたって、サンドちゃんはやっぱり黙って目を合わせてくるだけなんだろう。
でもそういうところは嫌いじゃないし、静かなサンドちゃんの傍に居ると落ち着く。
昔からそうだった。
初めからそうだった。

　

　
詰められる距離。
思わず下がる半歩。元の間隔には戻らない。

　

　
きゅ、と眉がよる。眉尻は下がる。
ともすれば泣き出しそうなその顔は、戸惑い。

　

個性。

笑わなくても個性。

青年は、そんなことを初めて言われた。今まで、無愛想や気味が悪いとしか言われなかったのだ。

自分より年下だろうに、と青年が感心しつつ大量の花を降らせると

少女からは想像出来ない驚きの声が聞こえた。

青年は思わず吹き出してしまった。
その場に手をつき、肩を震わせる。

青年のアイデンティティは一瞬で崩れ去った。