「……ああ、なんて、手応えのない」

その呟きと共に日蝕と月蝕を鞘に収め、私は深い溜息をついた。
私が交戦したその相手は、偉そうな口を叩いていたわりには大したことのない人間だった。
殺してしまいたい、殺したい——心の奥からふつふつと湧き上がってくるその衝動を抑え込みながら、ごつんと倒れた相手の頭を軽く蹴る。
気絶しているらしい、反応は何も返ってこなかった。

「さあ、先を急ぎましょうか、時風」
「……う、うん……」

私から少し離れた位置で浮遊していた時風を呼び戻し、私は先へ進んでいく。
私を見る時風の目は、少し怯えているようにも見えた——けれど怯えるのも仕方ないだろう、人間と戦うときの私は酷く昏い目をしているらしいから。

だけどそのような目になるのも仕方ないだろう。
今はもう大人しくしているけれど——私は殺人鬼なのだから。