アラヤちゃんの放つ光と闇と血液の魔術に続いて、私の氷雪魔術の刃を死霊術師の男へ突き放つ。
これで倒せると思いきや、死霊術師は自らが召喚した死霊達を壁にして私達の攻撃を凌ぐ。
でも全部凌いだ訳じゃなく、死霊達の壁で防ぎきれなかった分が当ったようです。

召喚した死霊達も失い、これ以上の戦いは無駄と判断した死霊術師の男は戦意喪失すると
捨て台詞を残してそのまま通路の奥へ霧のように消えていきました。

底の知れない死霊術師でした。出来ればまた会いたくは無いです。
私は手早く自分とアラヤちゃんの傷の手当をしてその場から移動します。

・・・それにしても、あの死霊術師と戦ってる時のアラヤちゃんはいつもに益して・・・
うぅん、相手が少し可哀そうになるくらいに魔術を乱射しててちょこっとだけ怖かったです。

　＊　＊

あれから暫く進んでいくと周囲が徐々に明るくなって通路の奥から光が見えます。
もしかしたらあれは出口かもと私は喜びながらアラヤちゃんに通路の奥から見える光に指差してはしゃぎます。
そんな私を様子を見て、アラヤちゃんは少し呆れながらも心成しか嬉しそうに感じました。

これでやっと外に出られる。こんな嫌な場所から早く出たい。
私の焦る気持ちが少しだけ歩む足を早めます。

・・・しかし、ゴールは目の前だというのに早々上手くは進まないものです。

私達の騒ぎを聞きつけたのか骨の兵士達が先回りして通路を陣取ってました。
骨の兵士達はまだ私達には気付いてないようで、こちらに来る気配はありません。

通路横の凹みに私とアラヤちゃんは一旦身を隠して、あれを如何するかを考えます。
周囲を見渡しても迂回できる通路は見当らず、戻って他の道を探すには少しリスクが高いです。

何より私は早く外に出たいので、引き返すくらいならこのまま一気に進んだ方がリスクは低い・・・。
隣で様子を伺うアラヤちゃんも、引き返すよりこのままあの骨の兵士を蹴散らして進む方がいいと言います。

考えの結論が出て、私とアラヤちゃんは武器を取り出して待ち伏せする骨の兵士達を蹴散らして正面突破をする事にしました。
幸いまだ気づかれてないので、タイミングを見計らえば奇襲する事が出来ます。
でも奇襲をより確実にする為に私はここで一手打つ事にします。

ゴソゴソと周囲に落ちている石や何かの破片を拾い集める私。その様子をきょとんとした顔でアラヤちゃんが見ています。

２〜３個ほど拾い集めた所で、それらにある術式を簡単に付加した後。
私はそれを思いっきり骨の兵士の居る方へ投げます！アラヤちゃんが隣で凄い顔で見てる気がします。

投げた物が骨の兵士の所に届く前に私は付加した術式を起動させます。
すると私が投げた物がシュンと消えて見えなくなります。

そして私達が投げた位置からは全く反対方向・・・
つまり出口がある方の通路から骨の兵士達が居る場所へ先程投げた物が飛んでいきます。

私が投げた物に付加した術式は空属性の物質転送魔術。座標さえ分かれば好きな位置へ物質を転送する事が出来る術式です。
先程投げた物に一回だけ指定した座標と指定した方角へ転送して付加消滅という感じに術式を埋め込みました。

コツンと骨の兵士達の足元へ投げた物が当ります。それに気付いた骨の兵士達は出口の方に顔を向けます。
更にもう１、2個ほど投げて、出口の方から壁に向かって転送させます。

転送した物がコツンコツンと出口の方から壁に当る音が聞えます。
骨の兵士達が音に気付いて、音のした場所へ向かおうとこちらに背を見せます。

今がチャンスと凹みから音を立てないように骨の兵士達の方へ近づいて開幕の氷結の一手！
私達の奇襲に気付いた骨達は、死霊だから焦る事もなくゆっくりとこちらへ振り向いて応戦しようとします。
・・・が、氷結の一手によって骨達の腕や足は氷が張り付いて骨達の身動きを鈍くさせます。

痛覚の無い死霊系は地味に厄介ですが、動きの鈍くなった骨なんてただの的当然。でも慢心はせず。
私達は武器を構えて、ここを突破するべく骨砕き戦を始めます。