にじゅうななにちめ。

さっくりと見張りの二匹を倒して先の通路を進む私達。

それにしても気が滅入りそうな場所です。
牢の隙間から見える影は人なのか魔物なのか良く分からないものばかり。
ここは何かの実験体を閉じ込めてる場所なのかしら・・・小さな呻き声が不気味で嫌になります。

入り口から敵に援軍の気配を感じて思わず奥の方に逃げてきちゃったけど・・・早くここから出たいです。

「はぁ・・・。」と溜息を吐いてうんざりしていると、隣に居るアラヤちゃんが珍しく声を掛けてくれました。
普段からあまり話さないアラヤちゃんですが、ここに来てまさかの事に数秒ほど思考が止まっちゃいました。

本当ならこっそりとしながら進んでいる時にお話するものじゃないのだけど、
アラヤちゃんから話しかけてくれた事がとても嬉しくて、隠密行動なんてすっかり忘れて夢中でお話をします。

お話の内容はアラヤちゃんが言うように他愛もない事ばかりで、
好きな食べ物や趣味とか・・・これって前に私から話した事あるような・・・。

それについて少し聞き返してみると、どうやらその時の話はあまり覚えてないとアラヤちゃんは言います。

うーん、覚えられてないのはちょこっとショックでした。
けどあの時はまだ出会って間もない頃だったし、早々私の事とか信じられるものじゃないものだから仕方ないよね。

・・・暫くの間アラヤちゃんとの楽しい話の一時を過しました。

　＊　＊


薄暗い通路を話をしながらてくてくと進んでいく私達二人。
少し前までの私の鬱屈した気分もアラヤちゃんとの会話のおかげですっかり無くなって気が楽になった感じです。

もしかしたらアラヤちゃんは気が滅入ってた私を見かねてお話を振ってきてくれたのかも。
そう考えるとやっぱりアラヤちゃんはとても優しくていい子なのだと改めて実感します。
・・・こんな健気なアラヤちゃんの為にも頑張ってお姉さんを見つけてあげなくちゃ。
私は心の中で感謝と共に決意を強く固めます。

それはそうと、アラヤちゃんとの会話が弾んで
いつの間にか他愛もない話から武器や魔術の術式のお話になってました。

アラヤちゃんの術式・・・血液を操る魔術のお話はとても興味深かったです。
私の扱う水魔術と似て否なる特殊な術式・・・説明の所々が私にはちょっと理解できなかったのが凄く凄く残念でした。

農場に居た時にもっと魔術の勉強を出来ていれば・・・機会があったらもっと勉強して頑張ろう！
幸い私には魔術師適性があるってお姉ちゃんが言ってたので、この一揆が終わったら魔術師を目指そうかしら。

そんなこんなで楽しく？会話を続けていると
唐突に通路の先からとても嫌な気配を感じて警戒しながらそちらの方へ視線を向けます。

視線の先には司祭風の男がこちらを見据えながら佇んでおり、
その男の傍にはまるで主人の守護者のようにアンデッド達が立っています。

私の身体に纏わりつくようなこの嫌な感じ・・・明らかな敵意と死霊術師特有の魔力を感じて私の身が竦みます。
身の竦む私とは裏腹に、隣のアラヤちゃんは何だかイライラした感じで目の前の死霊術師の男へ威嚇していました。

既にやる気満々で術式を展開するアラヤちゃんに続いて私も慌てながら武器を構えます。
何故か死霊術師を相手にするのは怖く感じるけど、どうにももう戦いは避けれなさそう・・・覚悟を決める私。