前回までの粗筋
負傷前後の記憶を忘れている奏撫が療養先で保護者禰宜さんに何があったのか説明しろと詰め寄ったら、
思ってた以上に自分が酷い目に合ってるらしき事を匂わされ、それでも知りたいのか？と逆に問いかけられてちょっと半泣き。でも堪えてたら、「ま、別に思い出さなくたっていーんだけどねテヘペロ」的対応されてムカついてるなぅ。
それはそれとしてと話飛ばされて、自分が神社に預けられたその後の周囲の状況と変化を教えられた。存在を覚えていない弟・葛築が色々ヤバイらしい。覚えていない人だけど、何故だか心が痛いのデス。


顔色真っ青にして座ってる奏撫の隣で、リゼさんもあちゃあ…って顔してる。
リゼ「サクライさんがどう動いてくれているか……ですね。あとは……身体の記憶から再現ですが……」
物理的に脳に刻まれている情報から再現したとしても、それは本来の葛築と似て非なる人格になるだろう。完全な再現はきっと無理。
で、ちらっと、カナデちゃんを見た。錯乱したら、最初の被害はすぐ隣に座っている自分だ。
表面上は変わらず平静を保っているが、内心はめいっぱい構えており。

そんなリゼさんの気構えを感じ取った訳ではなかろうが、奏撫は意識の暴走を抑え耐えた。
奏撫「わかった……話してくれてありがとう………」
低く、小さく、沈んだ声ではあるが禰宜さんへの礼を口にする。

禰宜さん「今回はここまでに致しましょう。貴女の現状についてはまた次に。」
流石にこの奏撫の様子から、話を続けるのは限界だろうと切り上げ。立ち上がり。ご自分で歩けますかと尋ねる。

話の中断でリゼさんもちょっとホッとするも、気は抜かず。
立ち上がり奏撫に手を差し出しながら
リゼ「鴨さんにお茶を煎れてもらいましょう。甘いものも一緒に。」
と寛ぎを促すように声をかけ。

奏撫「…うん。」
リゼさんの手を借りて立ち。連れ立って社殿を出ようとし、ふと立ち止まった。
振り向いて禰宜さんにもおずおずといった風に手を伸ばし。

なので、禰宜さんも奏撫の手を取って支えようと近付いたら…ぐわしっと素早く伸びた手で襟首掴まれ引き寄せられた。
禰宜さん「お？」
リゼさんと違い、完全に油断してたよこの人。

奏撫「一つ確認。あんたは、『誰？』」
顔を寄せ、ドス利かせた囁くような声で相手の正体を問いかける…
この男…今は女になっているが、とにかくこの捕まえた人物は人間ではあるまい。でも土蜘蛛でもないと言っていた。何者なんだ？と。

真剣に自分を睨む奏撫の視線に、これは、はぐらかしたら殴られる流れだなと感じ取りつつ
にっこり笑って
禰宜さん「この神社の禰宜ですよ。」

バグッ

禰宜さん「……。」
(´・ω・｀)痛い…。
正直に「自分は神様です。」と言ったところでふざけるなと殴られるだろうし。
いつも通り正体暈した答えを言い、覚悟した上でおもいっきりグーパンで横面を殴られた。
覚悟していても痛いものは痛い。頬押さえてちょっと涙目だ。

奏撫「もういい！リゼさん、行こっ！」
プンスコした顔で社務所へずかずかと去ってく奏撫ちゃん。結構元気じゃん。

リゼ「わ……えー！……っと。」
目の前でカナデちゃんが禰宜さんを殴るのを見てあっけにとられる。
二人のやり取りは小声で聞こえなかったため、何故いきなり引き寄せぶん殴ったのか解らないのだ。早足で去るカナデちゃんを追いかけようとして引き返し、頬を抑えてる禰宜さんに顔腫れないよう癒しの術をかけた。
禰宜さん「！…ありがとうございます。」
殴られた時よりも驚いた表情を浮かべ礼を言う。態々治癒術をかけてもらえるとは思わなかったらしい。
カナデちゃんのところに行ってますねと伝えて。
リゼ「ま、待ってください〜。」
再度飛び出し追いかける。

リゼ「……どうしたんですか、禰宜さんを殴ったりして……」
玄関先で追いついたところで、ズバリ聞く。

奏撫「殴られるって気付いてるくせに人をおちょくるから、お望み通り殴ってやっただけよ！」
禰宜さんと出会って間もない頃に名前を訊ねた時も「禰宜でいいですよ。」と答えられ、イラっとした思いがあったので余計むかついたらしい（プンスカぷー！

からかった返事で結果、カナデちゃんの気分を軽くしたんだなぁ…と。
じゃあ自分もそれに乗っかろうと、極軽い話題に振り替え。
リゼ「今日の鴨さんの用意しているおやつは何でしょうね〜。まだ秋の味覚には早いかしら？」
振り替えた話題で、まんま自分の気分も切り替わりわくわくしているリゼさんでした。

ちなみに鴨は拾いたての栗を使った栗饅頭と栗蒸し羊羹を用意して待ってますよー。


これでようやくタワムレでのリーゼロッテ・ユディット・オルガさんとの会話ログを用いて加筆修正したお話、終了です。

首の角度を気にせず、ぬいぐるみの尻尾を無造作に掴んだ。

ぬいぐるみをぶらぶらと持って歩き出す。
アークスさんと合流するつもりのようだ！

ワカヅキをなでようとしています。
凍傷とか気にしないようです

警戒感、危機感共にゼロの鴨に虎娘が歩み寄る。かわいく無害そうに見えてもその手、肉球の間に鋭い爪があることを忘れてはならない。

ぽんぽんと鴨の頭を叩いて起きないか確かめてみる。