ーーー…
　ここは、どこだっただろうか。昔住んでいた貸家のようだ。
どうしてこんなところに？
ー…ああ、たぶんこれは夢なんだろうな。


　ドアを開けると、女がいた。勝手に俺のベッドで寝ていた。
俺は思わずチッと舌打ちした。

「でていけよババア。ここはてめぇの家じゃねえんだよ。俺の家だ。」

女は突然の罵倒など無視して、コウルの声が聞こえたかと思うとガバリと
勢いよく起き上がった。女はなにも身に着けていなかった。

（くそが…身を売ることしかできないくそが…）

女はコウルの服をぎりぎりとつかむ。服にしわがよる。

「ああ、コウル。私の愛しい息子…お金はもちろん、もってきているわよね」

この女は家族だとかいう安っぽい絆を掲げては、俺から金を巻き上げていく。




「お前の息子なんざ何人もいるだろうが。俺には稼ぎがあるからって集るんじゃねぇよ。
子供がまた生まれて匿うのが難しいから金をくれ？ってか？」

夢の中だというのに、やけに舌が回る。

「はっ。ふざけてやがる。俺はお前の夫じゃねぇんだよ。」

コウルは女を突き飛ばした。
女はよろめき、床に倒れる。
コウルはさっさとここから離れたかった。入ってきた扉に手をかけた。

「私は、息子としてだけでなく、あなたのことを」


ーーー…

　目が覚めた。
どうしてこんな夢を見たのだろう。疲れていたのだろうか。
それにしても気分が悪い。
あの女は何をいいかけた？
考えたくもない。
「ああ、ほんとうに」


家族なんてくそくらえだ。