剛拳のラルフを情け容赦なく火傷させた魔法の炎。自分が得た新たな力を再確認する。
より正確に言えば、契約によって得たエンブリオの力なのだが。

傍らで赤く、時折金色に明滅する、手乗りサイズの少女のようなエンブリオ「サラマンダー」を一瞥し

しばらくその扱いに困った後

静かに語りかけ、指先で頭を軽く撫でてやる。

その満面の笑みに、微笑みを返した。


・・・魔法の力を得たものの、現時点では付け焼き刃に過ぎない。
もう少し練習し、実戦経験を積んだほうがいいだろう。

ルリアンナに尋ねてみたところ、この先の街道から逸れないよう真っ直ぐ進んでいれば
しばらくは危険の少ない、弱い魔物ばかりのエリアが続いているそうだ。
地図をしっかり確認し、一歩ずつゆっくりと、平原の広庭へ向かって歩みを進める。


程なくして眼前に2体の魔物が現れた。スライム状の魔物と、猫のような魔物。

剣を抜き、構える。ふよふよと浮いていたサラマンダーが、慌てた様子で左肩にしがみついてくる。
明らかに邪魔なはずなのだが、不思議と違和感はない。エンブリオとの契約には、そういう効果もあるのだろうか。

相手は最弱レベルの雑魚ではあるが、始めての実戦には違いない。
サラマンダーの力の確認も兼ねて、手札を惜しまず全力で挑むとしよう。

落ち込む。