何時だって『それ』は不意を打ってやって来る。


『それ』は出会い。


『それ』は別れ。


『それ』は再会。



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俺は鬱蒼とした森の中を掻き分ける様にして進んでいた。

あの後無事に飛竜退治を終え、町へと続く川で水辺の生物を撃退した。

小さな町で一休みした後で向かったその遥か先。

巨大な城壁が日も月の光も届かない程深く生い茂った木々の緑に包まれて佇んでいる。

ずっと歩き続けていた俺は大木の根本に開いた樹洞に腰かけて休憩を取る事にした。


上を向く。

空の色は見えないが、肌で感じる空気の冷たさからもう既に夜になっているのだろう。

薄緑色の光球の姿をした風の精霊が俺の目の前でふわふわと所在無げに漂っている。

俺がこの世界に来て初めて契約したエンブリオだ。

昨日ぐらいからだろうか、今まで何も反応を示す事がなかった精霊が突如動き出したのは。

俺に心当たりは無い。

無いが、一つ気になっていた事がある。


俺はエンブリオと契約する時に対象も定めず、ただ己が内と向き合い念じただけだった。

『我が身は自然、我が心は空、されど念ずるは形無き球体』

これの何処に風精の要素があったのだろうか、その時の俺は深く考えずに受け入れていた。

だが、俺はいったい『何』と契約したのか？

俺の言葉に反応してか、風霊が静かに動きを止めた。



その時近くの茂みで、そして俺の頭上でガサリと音がした。

正面の緑を掻き分け姿を現したのは白い猫・・・・・いやこれは虎なのか、白い虎だ。

真上の枝に腰掛けて居たのは、数百年以上の老樹に宿ると云われる木の精霊ドライアド。

如何やらこいつ等が森に入って来た俺を歓迎してくれるらしい。

手にしていた杖に体重を掛けながら立ち上がる。

持て成しは嬉しいが、どこまで楽しませて貰えるのやら。

俺は杖を構え集中した。

ドゥーロさんの記憶力の問題が単純な一時的など忘れかもしれないと知ってすこし安心した様子だ。

ドゥーロは箱の蓋に指を掛けると全力を込めて抉じ開けた

バキィッ と金属が砕け散る様な音を立てて箱が開いた