山上。
星のよく見えるこの場所まで来たのには理由がある。

先日知り合った商人の白雪との、何気ない会話でのことだ。

グレンダの世界——ゴードニアには、ネクターが存在する？

ありえない。
ネクターはメルンテーゼ特有のもののはずだ。少なくとも他の世界に存在するという話は聞いた事がない。
念の為、リアスに問い合わせてみたが、彼女もメルンテーゼ以外でネクターを見た事はないという。

矛盾。
そう、矛盾。
この矛盾を裏付ける出来事があった。

グレンダをいくら調査しても、その世界——ゴードニアに関する情報がまったく出てこないのだ。
ゴードニアという国のある世界とメルンテーゼと交流があった記録がない。
ゴードニア出身の人物がいない。
ゴードニアを訪ねた人物というのも存在しない。
グレンダという人物は存在するのに、まるでゴードニアという国そのものが存在しないかのように。

だから、この星屑の山へと来た。最後の手段を取る為に。
あまり乱用すべきではないが、仕方がない。
占星術——星々の記憶を辿り、真実への道標を探り出す術を行使する為に、アイサはわざわざ山上までやってきた。