黒川伯爵の手記

850年　8月6日　曇り

妻がこの世を去って半年は経つだろうか。
最近あの時の光景を夢で見るようになった。
飛行船のプロペラに巻き込まれる彼女の悲鳴が、血肉が、羽毛が、まるで今実際に起きたことのように再現される。

医者によるとストレスによるフラッシュバックらしい。
今頃になってこういった夢を見るのは恐らく酒と賭博で彼女を忘れようとする私に対しての警告なのだろう。

明日あたりに釣りに出かけようと思う。
何も考えず釣り糸を垂らせば少しはこの胸の中の重いモノも少しはマシになるはずだ。

話は変わるが従兄妹が卵を産んだらしい。
産卵祝いに気の利いたものでも贈ろうと思う。