無表情だった面持ちが不意に破裂したかのように、
は、はは、は、と笑う。

「勘弁してよ。もう眠ろうかと思ってたのに、
目が醒めちゃったわ。
酷い冗談。」

「『わたし』もね、帰る故郷は無いわ。事情は、きっと、全然違うだろうけど」

くしゃくしゃに顔を歪ませる。
精一杯の苦笑を見せる。

「嫌いじゃないわよ。
でも、土にヒトの種を植えても、芽は出ないでしょう？」

「心はあるわよ。
だから、気持ちはもらったげる」

「でも、芽は出ないわよ。
願い事なら聞くけど、それは応えられないから、
他のにしてよ」

「ほんとに」

他愛ない冗談をただ楽しんでいるのだと言いたげに、
わざとらしく小さく飛び跳ねて、またけらけらと笑ってみせる。

…………

ゆるゆると手を握り返す。
ほのかにぬくもるのは誰の温度なのか。

「花を愛でるだけ愛でて帰りましょうと言うのも、
卑怯なのかしら」と、とぼけてみせた。