【一揆参加17日目】

こうしてランプをいじっていると子供だった頃を思い出す。

幼い頃の私にはこのランプというものが働いている姿をまったく見たことがなかった。
当時の私はとても聞き分けがよく、幼児特有のおねだりというものをほとんどしたことがない子供だったという。
家はある程度裕福であったとはいえ、油というものは安いものではなく父の子育ての方針というものもあり、私は日の入りとともに眠り日の出とともに目覚める生活を送っていた。
だから私にとってこのランプというものが存在することが不思議で仕方なかった。

父が仕入れてきた特に役に立つことのない煤けた道具、父が遠くに出かけるときにだけ姿を消す不思議な存在。

幼い私は母に、なぜこの道具が存在するのかを問いただしたものである。
そのたびに母は笑いながら私の頭をなでてこう言ったものだ。

「今見えているものだけが物の価値ではないのですよ。道具も人も価値を発揮する場があるものです」


6歳の初夏の日、両親に連れられて村の豊穣を祈願する祭りに参加した。
父が運営に携わっていたこともあり少しばかり遅くなった結果、家に帰り着くのが日没を過ぎることとなったのであった。
夜の帳が降り始め、だんだんと暗くなっていく帰り道に幼い私は恐れを抱きながら父の背に負われていた。
日頃の生活からくる睡魔と、暗い道が続く心細さとが入り混じりながら目を凝らしていた時、父があの役に立たない道具を鞄から取り出すのが見えた。

父が二度、三度火打ち石を打った後、役に立たないはずのその道具があたりを照らしだした。
昼に比べれば弱々しくはあるが暗闇に怯える私にとっては、とても心強く心奪われる光であった。
睡魔にまどろみながら心の底から安心したことを鮮明に覚えている。



翌日、私は生まれて初めてのおねだりをした。



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そう言って、彼は木気を帯びた剣……という名の杖を抜いて構えた。