なし崩し的に組むことになったのだが、少し居心地が悪い。

　私を誘ってきた青井と名乗る人物はエンブリオらしい。
そしてその主人の憲子。私の世界でも半日は就寝する人々もいたがそれどころではない。
そしてこの青井と憲子の関係を見るに、エンブリオと主人に絶対的な主従関係が常にあるわけでは無いようだ。

　あくまで契約。その契約での関係は個々が決めるものであるらしい。主従。友人。ペット。仲間。
そして残念なことに、ネクターと呼ばれるこの花はこの世界にしか存在しない。
他世界から来た方々のうわさ話などをまとめるとそうなるようだ。
まあ、このエンブリオという存在もこの世界だけのようだが。

　新たに使役？したこのミニドラゴンももともとは襲ってきた魔物の一匹だった。

　そういえば、この契約は永続なのだろうか。
いや、それよりこの契約というものの中身はどうなっているのだろうか。
ネクターを渡せば契約してくれる。更にネクターを渡せばエンブリオが成長する。
というのは教えて頂きわかったのだが、
肝心要の契約内容という部分に関しては全くわからないままだ。
エンブリオが成長すると、私自身の能力が上がっている。そして、成長にも段階があり、
ある段階を過ぎると、エンブリオに新しい能力が発現する。

　なぜ、エンブリオはネクターを必要とするのか。
成長のためなのだろうか。生存のためなのだろうか。麻薬のようなものなのであろうか。
なぜエンブリオが成長するとその契約者の能力が向上するのか。
そもそも、ネクターとはなんなのだろうか。
そして、ネクターを集めた王は何をしようとしているのか。

…この一揆とやらに参加していれば、王や貴族、城の関係者とも接触できるかもしれない。
核心部分の取っ掛かりを見つけるまでが大変そうだ。


　さて、今度は仲間だ。この憲子の溢れんばかりの睡眠欲求は何なのだろう。

　私の世界にも長く寝るもの達は一部居た。
　例えば冒険者。
どれだけの冒険をしてきたのかは分からないが、たまに宿屋で見かける彼らの中に疲れきって半日、
悪ければそれ以上眠りこけ、宿の主人に飯に呼び出されて初めて起きる者達もいる。
その原因は疲れだろう。毎日そこまで寝ているわけではない。
普通に酒場に入り浸っている奴らなど夕方に起き、明け方に寝るものもいる。
　現在、冒険にでているのだからこの可能性はあるかもしれないが、
それでは私はどうかというとそうでもない。

　次に、ある種の薬を常用している者達。
これは単純に睡眠欲求を誘発する薬だから、だったはずだ。
鼻詰まりなどの治療薬や、精神に影響を及ぼす薬はそういった作用があったと記憶している。
　しかし、彼女が薬を常用していることを今のところは見たことが無い。

　最後に、深い瞑想状態にいる者達だ。
私も精神力の回復に瞑想をすることがある。これは、人によっては眠っているようにも見える。
また、肉眼では捉えられない領域の世界を窺い見るときにも、深く瞑想する。
　この世界で試した結果では、正直な所心を落ち着かせる程度にしか働かなかったが、
私とは違う形で、別世界と交信しているのかもしれない。

（ZzzzzzzZzz）　　　　…いやこれ寝てるな。ううむ。

　どうも彼女には少しの壁を感じる。まあ、出会って間もない。徐々にを期待しようではないか。

　しかしまあ、この彼女にすら、勝てなさそうな自らの貧弱さ。
私としては組めて大助かりだった。