■The straying travelers and a new edge...

その青年との出会いと会話の切欠は、本当に他愛のない事だった。

この“一揆”の騒動に集った人種・種族は多種多様、同様に携えた武器も多種多様。
一通りの武具類の扱いに精通している自分にとって、それらを鑑賞するのはある種の趣味の１つだったりする。

ある日買出しついでに人の流れを見ていた折、一見ダークエルフと思しき外見特徴を持つ青年が携帯している弓の形状が、所謂一般的な洋弓の細いものではなく、射出式のボウガンと見受けられ。
風変わりな得物を思わずまじまじ眺めていたら当然何？　……って顔をされてしまい、結果見せて貰えないかと声をかけてみたのが始まり。


そして——その青年が、丸腰になるような事態にだけはしないでくれよなんて冗談めかしながらも、何の躊躇もなくそれを差し出して寄越したのが、多分、得物だけではなく本人の方にも興味を持った決定打。


そんな訳ですっかり気に入ってしまって、何だか気付いたら相手の事情もあってとはいえ、臨時組をしつつ鍛錬に付き合ってもらう経緯になっているそのダークエルフの青年の名前は、リマトリィド。
その彼が契約しているというアニマのエンブリオの名前は、ナユという。


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食糧難も暫し見受けられる程度には困窮した世界でも、やはり酒類というのは人々になって無くてはならない嗜好品であり、ささやかな娯楽の１つでもあるのだろう。

あちこちの地域に必ず存在する小さな拠点や、全ての人がこの場所で最初に通る事になる王城前辺りには、食料やら物資を補給できる場所が存在する。
よってそこらで食料や必要な消耗品を仕入れついでに、シェリィ自身にとっても唯一の嗜好品である酒類は大体入手していた。


彼からの打診から合流、とりあえず詳しい話諸所は後でと、そのまま何故か攻城戦へ向かう……という流れで、なんだかんだで立ち話には長すぎる件を保留していたのもあり。

その夜の野営地は平原。
比較的自然の多い場所で、薪類には困らない。

食には拘らない上に、始終１人旅では栄養価中心に簡易食料で適当に済ませている食事には、元々その辺りは庶民的な暮らしをしていた様子のナユから一喝が入り。
結果彼らに任せておけば、何だか何時もより随分とまともな夕食を、焚き火を囲みながら皆で有難く頂いたりもして。

奢りなら付き合うとの返事をそのままにしてあったので、自身で自由になる程度の金銭で買ってきた酒を食後に開けて、ちょっとしたつまみと一緒にそれを呑みつつ少し腰を落ち着けて話をする時間が取れた。


元々はリマの用件は、彼の契約しているエンブリオであるナユに関するものだったのだが、表面上はリマを鍛えて、ついでに此方の鍛錬にも付き合わせるという事で示し合わせてある。

そして当然そういう名目だろうが、相手が居るなら付き合わせないはずもなく。
毎朝の習慣になっている自己鍛錬の時間には、寝起きがイマイチ良くないらしいリマをたたき起こして、道中や攻城戦に影響が出ない範囲で模擬戦形式の鍛錬時間を取るようにしていた。


焚き火の光で揺らめくグラスの中の酒を、左右色違いの瞳で見つめながらシェリィがそれらへの感想を口にする。


「やっぱ思ってた通りで腕力はあるんだよね。器用だからか、攻撃を受け流すタイミングや反応の筋も悪くない。ただ、持久力の無さが問題だな。ま、無いものを無理言うよりは、あるものを伸ばす方向の方がいいだろうから、出来るだけ短時間で速攻を決めるタイプの戦術立てられるようになるのが一番だけど」


こういうのを考えているのは実の所、大変楽しい。
リマ本人も、話を持ち出した折は何だかやる気ないのか嫌そうなのか、みたいな態度だった割には、実際打ち合いを始めれば悪くない顔を見せる。


「それにリマの剣の扱いと身こなしは“実戦を知ってる”ものだよねぇ。少なくともあのソードウィップやボウガンの扱いに関しては、付け焼刃とかじゃない。傭兵稼業だっていうし、武術回りは実戦で身につけたのか、それとも誰か師匠でも居た？　……ま、実戦を知らない連中を鍛えるのもやってきたし、それも嫌いじゃないけど。本人にやる気さえあればね」


彼の答えに耳を傾けながら、そもそもの話の本題に入る。
“シェリィの一揆に参加している事情・理由”について、リマが興味を持ったのか問いかけを投げかけたのが、この時間を取る切欠だったのだから。


「ま、前も言ったように全部は話せないけど、問題ない範囲なら。そもそも……本来このメルンテーゼには来る予定じゃなかったんだよね」


——たどり着いたのはほとんど“偶然の事故”に近い。

元々自分は内容は大体同じだが上司からの任を受け多様な異世界へ“派遣”されて、“任務”を達成すれば一度故郷へ報告を兼ねて帰る……というのが基本行動。
大雑把に言えばその内容は“悪意ある闇属性の魔族討伐”がほぼ１０割。


本来の派遣地での任務を終えて故郷へ戻る為の異界間移動中に、ある世界から外界へ向けて開いている“扉”の向こうで“嫌な気配”がするのに引っ張られるように、気付けばそこを潜ってしまっていた。

……１つ前の世界で、かなりハードな戦闘をこなして満身創痍だったにもかかわらず、だ。
本領発揮できる状態であれば共闘にとことん向かない戦闘方法を選ぶ為、共闘してくれるような物好きな同族が居ない所為で基本単身行動。

ゆえにどうしても負傷も多い。
治癒術なんて扱えないのに加味して薬剤類が効き難い体質では“倒される前に倒せ”という戦術に特化する形にしかならない所為で。


が、そんな状態でも結局そこで暴れていた魔物を残余力を費やし辛うじて殲滅して、その謝礼として傷を癒す間滞在する事になったのが、この“メルンテーゼ”の世界にある小さな南国の島だった。


「最低限傷を治してある程度動けるようになったら故郷に戻っても良かった……いや、そっちの方が治療の専門が居るし帰ってこいって指示はあったんだけど。魔物は倒したはずなのに“嫌な予感”が、消えなかった。一度帰還したら、嫌な予感がした程度じゃ再派遣はしてくれないだろうから、その答えがしっかり見えるまで、あーだこーだ理由をつけて滞在引き延ばしてたんだよ」


グラスの中で揺れる酒を少し口に含む。


「そうこうしてる間に起きたのがこの騒動——“一揆”だった、ってわけ。……前に口にした“ある一族”は、人の世を混乱させるのも大好きなんだ。嘆き、悲しみ、痛み……そういう負の感情を食い物にする。だからこの騒ぎの裏にアイツらが噛んでる可能性を調べるのが一番の目的だな」


何だか良く分からないが、妙に懐かれてしまった様子のナユが、己の足元で丸まって耳や尻尾をぱたぱたと動かしつつ焚き火の温もりでうつらうつらしているのも眺めつつ。


「……別に人助けだとかこの世界を救うみたいな崇高な理由じゃないさ。そういうのは堅苦しくて苦手だって言ったろ。どっちかっていうと闘争本能みたいなものに近い。相性が悪い、気に入らない、だから天敵なんだ。出会ったら必ずに近い確率でどっちかが死ぬ。今まで私が生き延びたのは運と実力みたいなものだね。ま、アイツらが噛んでなくてもこの騒ぎはさすがに見過ごせないから、何らかの収集つくまでは見届けたいし、悪い連中が居るならぶっ飛ばすってのは変わらないけど」


ぱちりと音を立てて爆ぜる焚き火、そして夜空に視線を移しながら。


「なんだかんだで普通にこういう自然があって、四季があって、そういう世界が好きだってのもあるね。うちの故郷はそーゆーの無いから。言ってみれば魔法仕掛けのきれーなだけの場所だ。魔法好きなヤツにはたまらないんだろうけど、うちの連中と違ってからっきし魔術に才能がない私みたいなのは居心地悪い。だから外の世界を飛び回ってる方が好きなのさ。……リマの故郷も機会があれば見てみたいな。実際に鉱石自分で掘ってきたりするの？」


こちらも一揆への参加理由、リマが興味を持った様子の事情は、話せない部分を除けば話し終わった。
それを彼がどう思うのか、その辺りはおいおいと聞いてみればいい。


……確かにリマやナユを自分の事情へ巻き添えにしたくないという思いはある。
が、決してこの程度の時間もないという程に切迫してもいないだろう。


その後は、彼の方の故郷の話等に耳を傾ける。
たまには１人でなく、誰かと外で呑む酒も悪くない、そんな風に思いながら。


■今回の日記にはリマトリィドさん（955）を拝借しました■

（リマさんの挨拶に答えていたら、いきなり青年を吹っ飛ばして現れた小柄な少年に、左右色違いの瞳がさすがに驚きに染まる）

（なんだかもの凄く見つめられているのに、視線を逸らせずに深まる困惑。尻尾や耳がある辺りで、きっとこの少年が——と思っていた所、さらなる驚き。
ハイテンションなままにいきなり抱きつかれ）

（とんでもなく元気のいい挨拶よりも何よりも、その予想不能な行動にさすがに一瞬フリーズする。そこをぺいっとひっぺがされて、放り投げられる様子を唖然と見つめ。
一連の２人の漫才のようなやり取りに、やっと冷静さを取り戻し。
最後の目配せに気付いて小さく頷きながら）

（ふふっと笑う顔は、リマさんには物騒なものに見えただろう←…。

（機械的ともとれる発言にも違和感なく返答して、頭を撫でようと手を伸ばした）

それで意見を違えるならまた別の話になるけど、って前置きして。

どうも聞き覚えのある人間の名前を呼びながら、妖精さんはあっさりと横をすり抜けて外に出てしまった。

PL:判ります……！私の方でも後々になって「そんなの居たの！？」ってエンブリオの名前を聞いて愕然とした事が……

早速使わせて頂いて、無事反映されました、かっこいい……！ナンバーの兼ね合いもあって揃ってくれたので、内心「おぉ！？」ってなっておりました……！

　
　シェリィの故郷の話を耳にして、ロウは急に乗り出すような姿勢になった。
　光の反射具合なのか、赤い瞳がきらりと光った。
　

　
　そう言うと、ロウは自身の胸のプレートを外し、その”中身”がシェリィとアークに見えるようにした。
　服、もしくは皮膚があるはずのそこは、空洞になっている。
　
　空洞の中心には何らかの装置が収められており、装置の中央には、ぼんやりと光る石のようなものが嵌っている。
　装置からは何本かのコードが空洞のあらゆる方向に伸び——その先はプレート程の穴からでは見えない。
　

（楽しげに微笑む相手に遠い目をして）

（尻尾も、元々垂れている耳もしおれてしゅんとしている）

（ぱったん、ぱったん、とゆっくり尻尾を振っていたが、先日のように勢いよくではなくすりすりと抱きついて）

（小さな声で言われた礼には、軽く肩をすくめただけ）

本能、許容と言った言葉を聞いて、ふむ、と少し間をおく。

（卑怯と言うな、と諭す相手に小さく笑い）

（アークの説得？にも折れたようで、少しならつきあってもらう、と頷いた）
（そして、多重契約の件になるとナユに少し外すようにと言うと、ちょこっと不満そうにしたものの素直にいうことをきく）

（じゃあ頼む、というお座なりな返事にむっすりしなｔがらもてってけと駈けていったナユを見送って、アークの話に耳を傾ける）

（なんだかんだとナユのことが気にかかるご主人）

最後は聞こえるか聞こえないかぐらいの声で付け加える。

平然と言っている本人は痛いで済んでいる辺り、どうなのだろうか。

ふーむ、と観察モードに入る。

わずかに首をひねる。

どうです？と微笑む。

思わずあわあわした。

はあ、と溜息を付く。

と、自らの羽に触れる。

声をかけられ、蝙蝠の翼と耳を持った少女は振り返る。

顔を合わせ──厳密には声のする方に向けているだけだが──くすり、と微笑んでみせる。

（綺麗な所作で腰に下げた鞘から長剣を抜き放ち、片手で構えを取る）

（呟きと同時に、手にした長剣の刃の帯びた光の範囲が広くなった）

（綺麗な挙動で長剣を鞘に収め）

（強さを褒められるのは嬉しいらしく、左右色違いの瞳を細めてぽふり、とナユさんの頭を軽く撫でる）

（ぼそぼそぼそと呟く様子は、どうやら少々不完全燃焼気味らしい。どこまでも戦闘馬鹿である←…。）

（綺麗な所作で腰に下げた鞘から長剣を抜き放ち、片手で構えを取る）

　
　エルの腕から縫いぐるみが飛び出して、ロウの横に並んだ。仁王立ちだ！