自分でいうのも何だが、俺はあまり自分の仕事に前向きなほうじゃない。
戦うのが嫌いだとか怖いだとか、そういうことではなく、ただ単に面倒事が好きじゃないだけだ。
面倒事が好きなヤツがいるのかは分からないが。少なくとも俺はそういうヤツを見かけたことはあまり無い。


だが、どちらかというと、戦うこと自体は嫌いじゃない。
俺は戦う直前の張り詰めた空気が好きだ。特に「獲物」を待っている時のあの空気が。真正面から挑むよりも裏かくことのほうが多いし(大抵、俺一人だけだし)。気配を殺し、相手の動きを読み、自分の呼吸を動きにあわせる、あの時の緊張感が好きだ。
いや、正面からの打ち合いも好きだよ。うん。


けれど、逆に狙われる側で相手の動きを読むという状況はいただけない。気配を殺して相手の動きを読むというのは変わらないんだが、何しろ非常に心臓に悪い。何度経験してもこればっかりは好きにはなれない。加えてそういう状況の時はこちらが疲弊している場合がほとんどだ。神経がすり減るどころじゃない。


つまりな、無茶をすると残りの人生がみるみる縮むだけだ。のんびりとした人生をおくりたいわけだよ、俺は。
……おかげで、さっきから応急手当をした右足が痛むのがやや癇に障る。
でもなあ、惜しかったなぁホワイトタイガー。

なぞなぞ　ではなく　謎　と言いたいのだろう・・おそらく。

・・なむなむ？

つまり、ノームの魔法で話せるようになったようだ。

驚きように、首を振りつつ楽しそうに笑って。

勢いの良さに、若干引きつつ頷いて。
ふゥん、と息を洩らし。

じい、と相手の近くに浮かんだエンブリオの姿を見ながら推測して。
名前を聞かれれば、一瞬間を置いて。

何故かドヤ顔で自己紹介した。

そこまで言ってから、自己紹介を済ませた貴方を見て「あれ？」と少し考え込むアルト。が、すぐに貴方の方に向き直り、若干赤面しながらも再び口を開く。

アルトはそう言って、差し出された手を握った。

　キラキラ。目を輝かせつつそっと触れようと手を伸ばそうとする。