サウスエルタと呼ばれる地と、メルンテーゼがどのような関わりを持っているか、今の私に知る由もない。
　　　　　　　　　第三期探索に参加していた亭主デーヴィドは幾つかの話を私に明かしてくれたが、
　　　　　　　　　彼もまた、自身の推測の域には触れようとはしなかった。
　　　　　　　　　ただ彼はこの一揆で明かされた新王”パラダイス”の名に、何か形容し難い不安を感じている。

　　　　　　　　　序盤にルリアンナが黒幕であると疑う者が少なくなかったように、
　　　　　　　　　私もまた、水面下を横切る影の気配を、今は僅かながら捉えている。
　　　　　　　　　サウスエルタだけではない、強制型エンブリオについても……
　　　　　　　　　事と次第によりそれは、一揆に投じられた命を、或いは意志やアイデンティティーを、
　　　　　　　　　一撃で破壊できる凶刃を隠し持っているのかもしれなかった。

　　　　　　　　　けれど今、戦う者に出来るのはただ前に、壁に阻まれながらも進む事だけだ。
　　　　　　　　　この世界に記されている大団円が新王を討ち取る先にあると、一頁一頁、繰る様に信じながら。

２人揃って、両手を差し出す。

ユキナは、コロナの手の上におたまを落とした。

コロの振り上げた"おたま"が、"あたま"に当たってミル撃沈。

身を起こそうとした相手を留めることなく逃して。

距離をとった相手にじり、と歩を進める。

言葉の中に、貴方の理由でないものが混じっている事に、貴方は気づくだろう。
言葉ごとに花喰い鳥はとつとつと距離を詰めてくる。