…この世界で目覚めてから、3週間と少し。
特にする事も無いからと始めた戦闘の訓練は順調だ。
自分が座学や訓練だけの頭でっかちになっていた事が良く解った。
互いの命を奪い合う実戦というのは多くの事を教えてくれる。

それに、純粋に楽しい。
実戦というものは一手判断を誤ると即座に戦況が引っくり返る。
スリリングというのだろうか、充実感に溢れた一時だ。


だが、この世界に居て実戦経験以外に何か得るものがあるか…と言うと、正直なところ何も無い。
精々別世界の住人とのコネクション位だろうか？
一揆とか言う反乱運動の行方には何の興味もないし、
反乱の真っ最中で治安が荒れに荒れているこの世界に
あの冒険者気取りの道楽者である姉が居る筈も無い。もっと気楽に冒険とやらを楽しんでいるだろう。
そもそもにして姉を探す為に故郷を発ったのだから、何時までもこの世界に居る事は無い。
実戦経験なら行く先々の世界でも充分積む事が出来る。


…潮時だろうか。
短距離の空間転移ならともかく、自分の魔法を使っての世界間移動は不可能だ。
この世界を脱出するための手段を探そう。

………姉なら、口笛混じりにどこの世界にでも飛んでいけるのだろうけど。

　
　　　　　　振り向いた娘は、すぅ…とひと呼吸するように口を開け、何事かを言わんとしている。
　　　　　　 暫しの後、どこか困ったように笑みを浮かべた。　

　
　　　　　　姿勢を正してそちらを向くと、少し胸を反らして左手を腰に当てた。
　　　　　　 随分と、その仕草が様になっている。　

　
　　　　　　　

>>……なんだってそんな事を聴くわけ？

>>人斬り…？何の興味もないわね。

そういうとペコリと頭を下げた。

　　　　　　不敵な笑みを浮かべる自称芋男

「身分をひけらかす気がない」と聞き、口調を改めるのをやめたようだ。

メディネの手のひらにある宝石を見て一瞬息を呑む。

無理だもんと口籠もるように、しょぼんしてしまった白いの。

尻尾を丸めてきゅーんと鳴けば、ふと代わりになんかうねうねした龍がそこに鎮座していた。

表情は無く漂う沈黙。

ムエンが纏う炎が、強く妖しく揺らめく……

そう言って、着いてもいない服の埃を払う。

揺らめき進むムエンを追って、ジョンも距離を取りつつ追跡を再開する…

行動ルートを決めかねている…。

黒い帽子の女性の一点を見つめている。

なにやら不機嫌になっているようだ。