「本当に、やらなくちゃいけないのか」
「本当にやらなくちゃいけないよ。むこうさんは本気だ。
手心なんか微塵も加える気はないだろうね」

「勝てるのか」
「知らないよ。勝率が何分あるかはなーんとなく分かってるけど、教えてやらん」
「……」

「シエミを助けたいんだろう。
マルムベリィを元に戻したいんだろう。
だったら、やるしかないね。
流石に命の取った取られたまでは行かないだろうけど、
ヘタしたらそれ以上の戰いだと私は思うよ」
「言葉で、言葉でなんとかならないのか？」

「あのなぁ、モック」
「……」
「言ったじゃないか、あいつは、ベアトリスは本気だ。
手負いの獣なんてレベルじゃないさ、自己を確立させるのに必死なんだ。
その為にはなんだってやる。
そんなの、マルの身体を乗っ取った時点で分かりきってることだろう」
「……」
「正直なところ、私には少しだけあいつの、あいつらの気持ちが分かるよ。私だってまかり間違えばああなっていたのかもしれない。
君にベロニカと呼んでもらえたとき、あるのかどうかもわからない『こころ』が震えた。
……ベアトリスのやり方は間違っているけれどね。でも、やり方すら選べなかったんだ」
「……」
「今日勝てたなら、話のひとつくらい聞いてやってもいいかな……」

「さて、ハンドルを交代しよう。組成は急には変えられんから、しばらくはかーわーいーいーベロニカさんの身体のまんまだけどね」
「……え」
「なんだよ？ ビビってるのか？ 君がやるんだよ、当たり前だろう？」
「……俺が？」
「そうさ、いつまでも寝ていられると思ったら大間違いだ。
お姫様を助け出すんだよ、男の子だろう、モック？」







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「こころは何時も今にいまし来し方に越し方にいましあなたのことを想う」
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