それは、砂を踏みしめながら先へ進んでいる途中でした。
慣れない砂に、時に足を取られながらも二人は足を進めていました。

単に語るべき話題が無かったからか、或いは互いに物思いに耽っていたからか。
はたまた、口を開けばそれすらも体力を消耗するのだと本能的に悟ったからか、しばし沈黙が流れていた時でした。

横で兎の呟く声が聞こえたので、少女は思わず聞き返しました。

紆余曲折はあったが、メグとアルのソロパーティーはサンダーバードと魔法契約することに成功した。
これでメルンテーゼに来てから契約したエンブリオは六体目。

水辺で偶然出会った人魚やら、広庭で目の前を横切ったケット・シーやら、その場で衝動的に契約する時代は終わったことは実感していた。
もうここから先は、戦略的に進んでいかなければメルンテーゼでは太刀打ちできなくなるだろうことは容易に予測できた。

情報を得るためにコミュニティに顔を出しても、情報は分刻みで新しい情報に書き換えられていく。
特にここ最近は、間違いなくメルンテーゼは時間の流れが早かった。

　例えば——各々のエリアで門番よろしく立ちはだかる強敵の情報。
　例えば——各々のエリアに現れた、契約すると強力な援軍となり得そうなエンブリオの情報。

果たして次はどこへ足を向けようか……。

「城内にすら潜り込めてないなんて……」と兎は付け足した。

そうひとりごちてしまうのも無理はない。
いくつかのコミュニティでの情報交換によると、上位陣は既に城の内部まで攻め入っただとか。
或いは、内部どころか兵舎を突っ切って塔の中に潜り込んだだとか。
幾つもの武勇伝を耳にすることができる。

しかし、反転するとそれは、自分たちが如何に時間を無駄に過ごしてきたかの証左でもあった。

メグたちがこの世界に降り立ったのは地球の北半球で言えば、確か夏。
メルンテーゼでの時間軸と元の世界における時間軸は、必ずしも同じではないから一概には言えないが、地球時間で言えば『秋は終わった』。

ここ、メルンテーゼでも寒風が吹き荒れ、冬の到来を告げていた。
二人が歩いている、この荒涼とした砂漠も、元は灼熱の砂地という触れ込みだったはずである。

しかし、今は冷たくて乾いた風が吹きすさぶだけだ。
灼熱地獄だった時期より、夢も希望も無い。

一度はサンダーバードと契約するために、敢えて厳しい山岳地帯に足を踏み入れた二人。
しかし、山岳の危険さは折り紙つきだということは重々承知の上だったので、
用事が済むなり深入りすることなく、一旦は比較的安全なこの砂地へと戻ってきたのである。


　　　∽∽

そういうとメグは一旦口篭もり、一呼吸おいてから改めて口を開いた。

今更語るべきことでもない、純粋にメグが現時点で一番得意とする属性である。

ここでまたメグが口篭もる。
そして、ふぅーっと一息ついて、先ほどよりやや声量を上げてこう言った。

しばしの沈黙の後、従者兎が口を開いた。

これまで、殊に魔法という面に関しては、何だかんだで従者におんぶにだっこだったメグ。
しかし、メルンテーゼで過ごす日数が長くなるうちに、そして深度が深まっていくうちに、メグなりに思うことがあったということだろう。

そこは、かつて足を踏み入れるも、その険しさから一度は進攻を断念した場所だった。

サンダーバードとの契約の時は、メグ自身ノリノリだった感は否めなかったが、しかしその半分はアルの方が口説き落とした末の方針決定だった。
しかし、メグの方から、メグの口から、これから先の自分の進むべき途について意見が出てきたのは、実質初めてと言っていい。

そのことに——メグが少しずつ成長していることに——驚きながら、聡明な兎の脳は、すぐにそのためにどうするべきかを弾きだす。

　　　∽∽


これから先の身の振り方について逡巡していた二人に、臨時パーティ募集の張り紙はまさに渡りに船だった。
試しに話に乗っかってみると、初心者であるメグを案じてか、あまり無理はしないつもりの行軍の予定だという……。

早速二人は、臨時パーティのメンバーと落ち合い、再び山岳へと足を踏み入れていくのだった……。

そう言って、アルの頭を撫でます。

そう言うと、背中からパキパキと小さな音を立てながら、黒い枯枝のような羽を伸ばして見せます。
それは羽と言われなければ、角か棘のようにも見えるかもしれません。

ミオは、静かにメグの言葉を待ちます。

まいとは逃げ出した！

まいとは戻ってきた！

　クロエはメグからスマートフォンを差し出され、恐る恐るといった様子で受け取った。

　クロエはそんなことを言いつつ、無造作にスマートフォンの画面に指を触れていた。

近くで耳打ちするアルを見て、ユキシロは平常通りに
ミケは頭上で両手を顔にあて、身悶えしている

メグに向かって、感心したように言った

少女は振りかざしていた杖を下ろし、一息つきます。

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
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　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
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