波の音がする。

空は白み黒い星が浮かぶ。半人半鳥の娘たちが高い声で歌いながら空を駆ける。
地には荒野が続きその一角に色鮮やかな織物が何枚も敷かれ、その上には磨いた黒木で作られ曲げ木に彫り物を施され赤い天鵞絨の張られた寝椅子があり、それに千加丸が腰掛けていた。
夕涼みといった体で、髪を下ろし団扇で自分を扇いでいる。

「こちらに寄越して頂いた蟹も、お千加様に大層感謝しておりました」

千加丸の側に錦模様の雨蛙が座っている。蛙なりに恭しく頭を垂れているつもりか小さい体を更に縮こませていた。

「荷馬車にのぼりうたた寝をしていたら、いつの間にか見知らぬ道に転げ落ちていたと。
正にいま甲羅に包まれた身が灼かれんやという所にお千加様がいらしたそうで」

「登喜春と頼美津は御役目をしておりますか」

「何か不自由などあらせませぬか」

「……」

錦模様の蛙はのそりと動き顔を上げた。

蛙はぺこりと頭を下げて敷物の下にもぞもぞと潜り込んだ。
遠い空からキイイ、と半人半鳥たちの甲高い鳴き声がする。

　　　　　　——顔をみてきょとんとしている。

　　　　　　コートのボタンを外し、ショールとともにはらりと地面に落とす

布人形たちが動きまわり徐々に大きくなる