風の魔力を纏った一撃は、ローバルの体を貫き、大きく吹き飛ばす。

物理攻撃に優れた別の成体ローバルが、シュウスケの背後から襲いかかる。

風の装甲は霧のように溶け、瞬時に炎の魔力が全身を覆う。

火の鳥の力を司る妖精、ファダルコード＝ルジの魔力によって生み出された装甲は、激しい熱波と共に双剣を生み出した。

シュウスケの背から炎の翼が広がり、双剣は炎に包まれる。

翼がなびくと共に、シュウスケはローバルに飛び込むように高速で飛翔。

炎の剣が振り抜かれ、ローバルの体に十字の傷をつけ…そこから紅蓮の炎が巻き上がった！！

月の輝きを彷彿とさせる穏かな輝きが、シュウスケを包む。

桃の花弁を模した魔力の破片が宙を舞い…アミィの魔力で生み出された装甲が転送された！

キセル状の杖を呼び出し構えると、先端から炎の刃が現れる。

巨大な鎌となった武器を振りかぶり、ローバルの集団へと飛び込んで行く！




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ふと、意識が遠くなるのを感じる。



体は動き、ローバルと戦っている。

だが、心はどこか離れた場所にあるような感覚。

ぼんやりとしたその感覚に戸惑っていると、暗闇に包まれたその空間に、小さな光が現れる。


その光は暗闇の中に溶けて行き…そこから一体のローバルが湧き出してきた。

それは紛れもなく自分の姿。ローバルとなった『黒谷シュウスケ』そのものであった。

『彼』が語りかけて来る。

その言葉に応えるように、新たな光が降りてくる。

今度は暗闇に沈まず、そのまま光が形を成していく。

現れた姿は、まさしく人間の『黒谷シュウスケ』であった。

旅を始めてから。この世界にやって来てからも、ずっと言葉にしてきた事。

誰かのために、自分にできる範囲の事を、精一杯やる。『俺』と『黒谷シュウスケ』が大切にしていた事だ。

瞬間、人間のシュウスケの姿が、強化外骨格に覆われる。

ローバルの姿をした『シュウスケ』が、再び小さな光の姿になる。

人間の姿の黒谷シュウスケの変身が解かれる。そして、満足そうに微笑むと。


再び小さな光の姿になった。


ローバルとしての一面。　人間としての一面。

それぞれの姿を持った2つの光が、シュウスケの前に近づいていき…


強い光を放ち、暗闇だったシュウスケの精神世界を照らして行った。







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意識を取り戻すと、ローバルが距離を取り、周囲を囲んでいる。

見慣れた妖精達の声。

危機的状況ではあるが、そんな彼らの様子に笑みが漏れる。

バックルを開き、宝玉を取り外す。

強化外骨格は消え、ローバルの姿に…

否。黒谷シュウスケの姿に、戻っていた。

涙ぐむフィリアスを見て微笑み、シュウスケはフェアリードライバーの力で、異空間に手を入れる。

取り出された手には、いつか手に入れたトリニティバックルが握られていた。

変身を解除した今が好機と、成体ローバルがこちらに飛び掛かってくる。

刹那、ローバルが大きく吹き飛ばされる。

シュウスケ達の背後から、砲撃音が何度も響き渡り…

背後に召喚した小さな船—キャラック船を連れ、黒ずくめの妖精…バニラが現れる。

微笑みながら頷くと、バニラはローバル達のいる方向へ向き直り、攻撃を開始する。

そう言いながら、シュウスケはフェアリードライバーにトリニティバックルを取り付けた。

三人の魔力がトリニティバックルに集まっていき…中心にフィリアスの宝玉が。そして左右に、ファダの緑、アミィの蒼い宝玉がセットされる！

風の魔力が、炎の魔力が、月の魔力が。


ひとつに混ざり合い、シュウスケの全身を巡っていき、一つの強化外骨格を生み出した！

マスカレイダーフェアリー・フィリアステンペスト。



熱を帯びた突風が光を纏い、暗夜の森を包み込んだ。