瞼を開けると、そこにはよくわからない生き物がいた。

　僕がそう問いかけると、謎の生物は声高らかに答えた。

　——暗転。


　　　　†





「これで、トドメよ——！」
　立花雪枝が二丁の拳銃を構えると、現れた黒騎士に大きな風穴を開けた。
　それは間違いなく致命的な一撃であり、それが耐えられるものでないことは誰の目にも明らかだった。
　鎧の隙間より煙が漏れ出す。

　意外と呆気なかったな——。
　倒れて動かなくなった鎧を前に、場の空気が自然と弛緩する。





黒騎士のスキゾジェネシス！
黒騎士のHPが 65556 になった！
黒い霧が変容し、変成のドレイクを作り出した！


「まだ、まだ終わってない……！」
　僕がそう言って警戒を強める頃には、既に他の皆は次の攻撃準備に移っていた。弛緩こそすれ油断はしない。ここに集まった僕を除く7人は、この一揆全体においても有数の実力者であるようだ。

　鎧から漏れだした霧は、絵本にでも登場するような強大な化物へと変化した。
　交戦が、続く。

　　　　　†

「よく持ったほうだ、褒めてやる」
　僕達と一緒に戦っていたメンバーの一人——シミナ＝シエラが、そんな声を漏らす。
　以前彼女を見かけた際は、ここまでの圧を持ってはいなかったように思えるのだが。次々に寄せては返す敵の変成体を屠っていくその絶対的な強さは、竜種の王である風斬東と比較しても遜色ない。

「……」
　ルリアンナの姿をしていた変成体は形を無くし、黒い霧となって消失した。

「——成程。面白い手品でした。」
　不死の王である呪われし魂、レーネフィア・ディ・ステラは、観劇でも終えたかのような様子で優雅に鎌の血を払った。


「そんなバカナ・・・・・パラダイス様のチカラ・・・ヲ・・・・・」
　崩れ落ちる鎧。
　肉体は煙のように天へ上り、後には空洞の金属片だけが残った。

「この鎧は、多少の魔力はあれど変哲もないものね」
　金属片の奥へと体を伸ばしたリリスが、一度息を吐いて言う。

「……そうか。僕達はこれまで、とんでもない勘違いをしていたんだ——」






「リリス。君は以前言っていたよね。王は僕と同じように、強制契約エンブリオに疾患しているかもしれない、って」
「えぇ。エンブリオである実験が、高頻度で行われ過ぎているもの」
　　　 、
「それは逆だったんだ。王が強制契約に罹っているんじゃない。
　　　　　　　じぶんじしん
——王が、強制契約をバラ撒いているんだ」





　　　　　†

　夢を見る。

　ノールはただ一言「そうね」とだけ言葉を紡ぐと、そのまま霧となって闇に消えた。

少女は地面に二文字書く。
彼女の名前だ。

一文字目の説明を終えた白雪は二文字目の説明にとりかかる。

青年はポケットからトランプを取り出して、そう尋ねる。