（——約束の日。忍の男から伝え聞いた場所へとやって来た青年は、
その姿を探してきょろきょろと周囲を見回していた。

市には色とりどりの屋根が並び、もう商品を並べている店も多いが、
早朝ということもあってか人通りはまばらだ。
想像していたよりもずっと少ない人出に、マフラーの下であからさまに安堵の息を漏らす。

これなら、大丈夫かも——そんな風に思いながら、待ち合わせの目印にと
指定されていた大木を見つけ、足を向けた）

（よく知る声に名を呼ばれ、顔を向ける。
約束の場所に立っていた大柄な人物は、カサネが確かに探していた人ではあったのだが…）

(その人の装いがいつもと違うことに戸惑いの声が上がる。
冷静に考えれば、こんな場所で忍装束など着ていたら目立って仕方ないのだが、
カサネの中で彼の姿は忍の格好で定着してしまっていたため、
見慣れぬ姿に動揺が走ったらしい)

（シンプルな服装や眼帯をしているということよりも、
目元に鉢金の陰がないことが一番驚いたようだ。
不躾にならない程度にまじまじとその姿を上から下まで見て）

（珍しく、からりと笑った）