（勝利した結果という夢を幻想した。中の傍観者が多忙で簡略式）

紫色の閃光が中空を飛び小規模の爆発音と砂煙を撒き散す。濛々と舞う砂煙が視界を塞ぐ。
先の見えない煙の中で、ぬっと黒いシルエットを浮かばせて、二匹の魔物が目標に向かって飛び込んでくる。
武器を大きく振り上げて飛び込んできた醜豚鬼の魔物に、毛玉兎は寸での所で魔物の一撃を回避する。
攻撃を回避した──所を、回り込んでいたもう一匹の殺人兎の魔物が追撃してくる。
殺人兎の鋭い爪が獲物を引き裂かんと毛玉兎の心の臓へと大きく伸びる。
毛玉兎は軽く舌打ちすると、鋭い爪が当たる寸前に身体を傾かせて避ける事に成功した。

──と、次の瞬間。視界が歪んで立眩みを起こす。
致命傷は避けたが、完全には避け切る事は出来ず、小さな掠り傷を受けていた。
如何やらあの鋭い爪には何かの猛毒が仕込まれていたらしく、その掠り傷から毒が侵入したのだ。
毒によって身体が言う事が利かず、毛玉兎が苦痛に顔を歪める。
その様子に傍に居る妖精達が大声で何かを叫んでいる。…が、毒の影響のせいか何を言っているのか理解できない。

動きが鈍った所を見逃さず、殺人兎が間髪入れずに次の攻撃を仕掛けてくる。
懐へ飛び込んでくると鋭い毒爪を下から上へと袈裟掛ける。
これ以上毒を受けてはいけないと、寸での所で後ろへ飛び込み殺人兎の攻撃を避ける。
しかし、猛毒のよる発熱で意識が朦朧としている頭では、回避した背後の地点に回り込んでいる醜豚鬼の気配に気付かず。

醜豚鬼が手に持つ棍棒を大きく空へ振り翳した所でその存在に気付いた毛玉兎は、
けたたましい大声と共に振り払われたその一撃によって高く宙に舞う身体の感覚と
視界に見える青い空から水の中へ叩き込まれるのを最後に、毛玉兎の意識は闇へと閉ざされた…。


・・・・・・・・・
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……一滴、二滴と雫が落ちる音に、毛玉兎の意識が戻る。
気が付いた毛玉兎は周囲を見渡すと、ここは如何やら何処かの水辺の様で、運良く浅瀬に打ち揚げられてたみたいだ。
身体を起こそうとすると全身から酷い痛みが走る。魔物との戦闘の傷が思っているよりも酷い。
この水辺まで流されている間に身体を蝕んでいた毒は抜けた様だが…。

身体の傷は酷いが幸いにも致命傷は無く、無事に生きている事に感謝する。
毛玉兎は激しく痛む身体を起き上げると、周囲を警戒しつつ安全そうな岩場を見つけるとそこに腰掛ける。

……そういえば、いつもの彼女達の声が聞えない。
如何やら川に流された時に逸れてしまったらしい。
ただ未だに契約のライフラインが切れていないので、逸れただけで無事なのであろう。
彼女達が無事ならこのライフラインを辿ってここまで来るだろうから、下手に動くよりここに留まっていた方が良さそうだ。

背凭れている岩場から見える果てしなく青い空を眺めて、一つ溜息を吐く。

『あぁ…強くなりたい』

どうやら忠言を理解したのか、食べるのはやめたようだ。
もふもふしながら自身の蔓をニョロニョロと動かしている。

一方の触覚組。

楽しそうに遊ぶ様子を見て微笑みながらみょーんみょーんと変化をつけながら遊んでいる。
触覚で遊ぶこと自体はさほど気にしていないようだ。

と、落ち着きを見せたかのように見えたあるらうねの方から不穏な音が響いた。

再び聞こえた不穏な発言。