ムーニア率いる我々一行は森を後にし、一旦草原へと向かう選択をとった。
あのインコに敗北したまま森を離れることは非常に不服だが、現実問題、今の状態では雪辱戦を仕掛けたところで運にまかせた戦いしかできないだろう。
確実にあのインコを制す為に、他所でのエンブリオ契約、また装備を新調し、十分に用意を整えた上で再戦に挑む運びとなった。
装備。必要な物は、最低限2つ。
1つは魔法に対して抵抗力を働かせる、装飾具の用意。
1つは十分な威力を発揮するための、正しく武器として作られた素槌の用意。
どちらにしても、原材料となるものと、作製のために費用が必要だ。
あのインコが森を後にする前に、事は早急に済まさなければ。

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攻城の最中で、一人の男性と出会った（さすがに女性ではないだろう）。
声をかけてきた彼は、竜だった。
いや、人間の姿であったため正確なところは判断しかねるが、あの角と尾は竜に属するものであることには違いない。

森の外で出会った、初めての竜だ。

不遜で傲慢で横暴で、だがそれ相応の力を有する存在、というのが、今まで私が読んできた書物の中での竜だった。
だが、彼は不遜で傲慢で横暴ではなかった。
むしろ、見知らぬ私に声をかけてきた理由が、一般人が迷い込んでいたのであれば心配だったというのだから、他者にも親身になれる、ヒトのよい竜ということだろう（思ったよりも、書物もあてにならないものだ）。
聞けば、成り行きで一揆に参加したというので、少々ヒトが良すぎるのではないかとも思う。
……それが、彼自身が望んだことであれば、構わないのだが。
私は私が望んでここにいるが、それが少々気がかりに思う。

恐らく「もふちゃん」というのは、あなたに対する彼女なりのニックネームである。

頬など掻きつつ呟く青年。
身を案じてもらえた事が面映ゆいらしく、曖昧な微笑を浮かべて見せる。
かと思えばフイユモーヴが頭を下げる様子に、慌てたようにそう返す。

続く問いには、一瞬迷いを見せるも。

そう、ポツリと返す青年。
亜人らしい独特の手触りだな、などと思いつつ握手を交わせば。

ふとした思いつきの提案を投げてみたり。

妖精さんズに陣形を指示しつつ、刀を構えた。