命の危機が回避されて狂喜する2体のエンブリオ。
その足元で「サクッ」と、土の抉れるような音がした。

その方向に目を向けると、2本のナイフがそれぞれの足元に斜めに突き立っていた。

おててにぎにぎ

自前の鎌でざっくり右側の髪束を切り裂くもののすぅっと上から流れてくるように再生する

ツボにハマったらしく、普段の表情を完全に崩して笑っている…

どうにもきな臭い話が絶えない戦いだ。
反乱とはそういうものなのかもしれないが、ソレにしたって……複雑な表情。
言い切るフイユモーヴの様子には苦笑いを返すしか出来ない。
彼女はこの『世界』の住民だ。
この主張は頑迷かもしれないが、それでも当然の主張ではあるのかもしれない。

軽い声音で言ってのける。
どこまでが本気なのやら。

自由といえば自由だが、それはつまり留まらない身という事だ。
彼女が逢おうとして逢えるものなのかどうか。
それはかなり確率が低くなるのではないか……そんな事を思いつつも、口には出さず。

彼女の契約エンブリオだろうかと、最早気配も残らない乱入者の消えていった先を一瞥する青年である。
随分と賑やかしいものだと苦笑しつつ。

そして彼女の手が触れる感覚にジワジワと何やら追い詰められていたりもした。
が、それが不意に消えた。
自ら手を避けてくれた事にそっと息をつきつつも、申し訳無さそうに頬をかく。

この反応も仕方ないだろうさ、と笑いかけ。

気にするな、と言葉を投げるのである。

ふとオリビンの右目　眼帯の下がぼんやりと緑に輝くと
何もない中空　オリビンの眼前に掌大の輝石が浮かび上がる。

その名をそれを跳躍と共にカタナで叩き斬ると、砕けた欠片が粒子にほどけていき
渦を巻いて徐々に形を成していく。
淡い緑の光の中からお腹に子供を宿した聖母にも見える天使が現れた。