イベントが終わるのは早い。

折角の会場、汚れたままではいけない、と最後の美化運動に参加する。
緑の袋と手袋をしてあっちへうろうろこっちへうろうろ。
時計をつけ、待ち合わせ時間を確認する。
まだまだ時間がありそうだ。

「っは・・・結構・・・多いのだ・・・」

皆さんゴミは持ち帰りましょう！

花火の残骸を拾い、頭をあげる。
レイの姿が見える。
こちらに背を向け、何かを浮かせて袋にいれているようだった。

サッ・・・

その時ふと視界の隅に黒い影が横切った。
何かと横を見れば、日差しの中日陰になっている更にその奥。
木の影になっている場所に黒い人がいた。

・・・人？

いや、頭からツノのようなものが生えている。
手のひらを見つめ、何かを苦々しげに呟いているようだった。

その暗い、クラい、クライ影がとても気になって————

「セシル？」

びくっ

背中にふわりとした羽が乗り、思わずそちらを向けばレイがいた。
ほっとしたように力が抜ける。
じわりとにじむ汗を隠すように笑顔を作った。

「もう時間ですよ、行きましょう？どうかしましたか」

構うことなく相手のほんわかとした笑みに小さく息を吐いた。
大丈夫。

ドキドキする胸を押さえ、その場を後にする。

小さく振り向いたがその影はもうなかった。

セシルを心配し、声をかけていた後ろで。



「さみゃあ！」

なんか聞こえた。

針と糸を浮遊させ、ティールに魔力制御を任せる。
木から魔力を布に移し、やがて布は服になった。
少々雑な部分も目立つが、着ることは出来るだろう。

裁縫なんて初めてだ。一揆を始めてからこういうことをやり始めたわけだが、
いかんせん元が不器用だから危なっかしい。