朝———。

レクイエムがふと、主人格として顕れたときだった。

ここのところ、ずっとそうなのだ。
ほとんどの場合は、フィドルが主人格。
そして進攻やらパーティとの対話やらも任せっぱなしだ。

戦闘の時だけ、人格を入れ替えて戦っている。
最近の戦闘では、身体が少し重く感じる。
それは進攻による疲れだろうと勝手に解釈していた。

寝て起きたばかりの今であっても、身体の重さを感じる。

同じ身体を持つ者同士、もし身体に異変があればそれは共有できるだろう。
何もないなら何もないと、割り切れよう。

驚いた。
「疲れている」「何ともない」いずれかの答えを予想していた。
しかし、返ってきたのは、「軽い」。

レクイエムは混乱している。自分が重いと感じる身体。
フィドルが軽いと感じる身体。
どちらも同じはずなのに、この差はなにか。

焦っていた。なにか。なにか。嫌な予感。
魔族である魂、魔力による破壊行動は得意だった。
・・・魔法に関する知識や、融合、召喚など、技術的なものは、ほとんどわからない。
それでも、何か・・・。

その前にこう言ったはずだ。
「寝てるのをわざわざ起こすのはどうか」と。
今言ったのは、それに値することではないか？

などというと、強制的に主人格が入れ替わった。



——バタリ。
主人格がレベックに切り替わった途端、身体は倒れてしまった。

確かに主人格は切り替わった。
レベックも意識を覚醒している。
しかし立とうとしない。呻くだけだ。

レクイエムは驚愕した。
フィドルはわかっていたようであったこと。
なにより、あれほど弟を気にしていたこの兄が、仕方ないの一言で済ませたこと。

そう言って主人格はフィドルへと移った。
レクイエムの思考回路はショート寸前、であった。
こんな無茶苦茶なやつでは無かった。
いつの間にか変わってしまった、という感じか。

いつの間にか冷静になっていた。
理解できないことを考えても答えは見つからない。

———封心術式、展開。

そして、レクイエムの意識は暗闇へと堕ちていった。