積りに積もっていた瓦礫の山が、ガラガラと崩れ落ちていく。
暫しそれが続いた後…山の中から褐色の肌が姿を現した。

一度その姿を見せてしまえば、あとは早いもので…ラルクゥは荒々しく瓦礫を蹴り除け、身体を起こす。
直後、冷静に土埃を払いつつ周囲を見回し始める。その動きからして、大きな怪我はなさそうに見える。
…周囲に人影はない。ただ一つ、小さな透明球体だけが弱々しく浮遊しているだけだ。

ハルの精神が込められた小さな球体が、ぼんやりと弱々しい白光を放ち始める。
その印象としては神秘性よりも脆さの方が際立つ。少し風が吹けばシャボン玉の如く消し飛んでしまいそうな程だ。

ラルクゥが懐から砕け散った刃らしきものを取り出した。
持ち手の部分はどこにも見当たらない。

破片を布で包み、荷物の中へとしまう。

浮遊している球体の動きが、不自然な程にピタリと止まる。

ラルクゥが球体内へと強引に手を突っ込む。
球体が放っていた朧な光が掻き消え、水面が揺れるかの如くハルの姿が乱れていく。
その表情もまた、苦悶のようなそれへと変わっていった。

二人は相変わらず、淡々と各地を巡り続けている。
ただ先日と異なるのは…ハルシオンの機嫌があまりよくなさそうな点だ。
無表情でこそあるが、その顔には露骨な失望の色が浮かんでいる。

無表情を貫くハルシオンを見つめながら、トガノが肩を竦めた。

唐突に、ハルシオンが空に向けて手を翳す。一羽の鳥の動きがピタリと止まった。
そのまま手招きするように手を動かすと、鳥はハルシオンの傍へと引き寄せられ…。
その手を握り締めた途端…鳥は強力な何かに潰されたかのようにグチャグチャになってしまった。
羽、肉塊、そして血液が周囲に飛び散るのを見ると…ハルシオンはほんの少しだけ笑い出す。

トガノが右手の構えたナイフでベルンハルデの脚へと突き刺そうという流れにベルンハルデは気づきかけたが、トガノの行動の方が一歩早い。

だが、瞬時にベルンハルデはとっさの行動に出る。

ナイフにより刺激を防げないと、そう思ういやいなや、刺されるであろう脚で迫り来るナイフごとトガノに蹴り飛ばそうとするだろう。 当然ナイフは脚に深々と刺さるだろうが。

それでもお構いなしに。 この行動は吉と出るか凶と出るか・・・。