私は、きっと、これからも抗い続けると思います。
もしそれが鍵となるのならば、きっと私は大切に持っていましょう。
深く心が傷ついて、身体が損なわれてしまっても、それだけはきっと……

だから、私のことを、見ていてくださいね。
ヤールさんにこう頼むのは、何かおかしい気もするけれど

……ほんとうに？

ほんとうに、わたしのところに、かえってきて、くれる？

ずっと……

ずっと待っていてもいいって、お願い、言って。
そうしたら……

そうしたらわたしは、わたしというともしびが燃え尽きるまで、待つわ。
どんな嘘だって、幻だって、ほんとうのことにして、信じる。

わたしは……わたしも、自分の望みの多くを、知らないまま……
ここまできて、しまったから。

“わたしは……そう、確かに、しあわせになりたい。
　でもその先は……望めない。何を望めばいいのかも知らない……”

“或いは、誰かが望んでくれるのかもしれない……わたしたちの、代わりに。
　わたしたちに足りないもの……知らない答えを”。

……覚えてる？
わたしは……しあわせのために何を望めばいいのか、ずっと、知らないまま……

だから……
だからもし、これ以上を、願っても、いいのなら……

わたしは……あなたに、望まれたい。

どうか、望んで。
わたしが、あなたを信じることを……

わたしが、あなたのためのともしびであることを……

あなたの火で、在り続けることを。

そこで死んでいるものは……そうだな、
死という名で暗部に追いやられ、抹消され、捨象されているものは、
戯れを担保するための亡骸は、
《不明ということ》だ……あるいは、《明晰ということ》。
その絶対性の明証。
いや、明証の欠如、その欠如のまた欠如……
なにかがなにか《であること》を、
保証する契機だ。
そしてその捨象をかつてある哲学者は《気晴らし》と呼んだ。

そこに紛れて遠ざけられているものは、
あんたの云うように、
人は死ぬという事実だ。……

……私たちの戯れは、ある自明さに甘えてる。
そいつは認めよう。
その自明さってのは……
《この世界のなかでなにかが本当に起こっている》という自明さだ。
どれくらい起こっているのか、
ってえ割合は、人それぞれだとしてもな。

だがそれならあんたも、
戯れるためには《死》が要るのかね？
その約束が。
光と闇の二態を担保する、
ある控えめなもうひとつの光が……

……喩え話に好き嫌いを云うのも莫迦げちゃいるが、
あまり好きな話じゃあないな。
光と闇を支えてるのは、結局光だって、
不公平な話はさ。

殺すべき王の、
いない時には、ヤール……
……私はメルンテーゼに、
もういてはいけないということになる。

戦うべきものを見つけ出すことはできる。
いくらでもできるだろう……
世界は無数の小さな支配と、無数の小さな闘争に満ち満ちている。
あんたの中にそれを見出すことだってできる。
いや、私の中にだって。……

私は《そうせずにはいられない》が、
《そうはしたくない》のも本心なんだ。
そいつは……わからんよ。

望みの望み、戦いの果ての果て……
それはきっとひとつのものに絞れやせず、
併立し鼎立するそれぞれが、きっと少しずつ食い違い、
場合によっちゃあ相矛盾する。
そういうものだよ。
あんたは、物事に純粋さや唯一さを、
——真理を付与しようとするが、
決められないものだってどうしてもある。……

あたしの世界の真実は八割だ。
八割くらいは、私はあんたの不死を願い、
八割くらいは、永遠の闘争を願い、
八割くらいは、フィガロのことを助けてやりたい。
あいつの悲しむ顔を見たくない。……
そうしたものすべてを裏切る二割の未来を、
あたしは見捨てたくないと、
ま、八割くらい、思っている。

……ハッ。
救いのつもりか？
そりゃあ、
……ここまで来ちまったら、
いまさら、お人好しのほかに、
理由なんてないかもしれねえが。

なかなか、気遣いがうまいじゃないか。
そいつが望まれた仕草だと、わかるのか？
私は革命者だ。
戦士だ。
あまり泣かせないでくれよ。
……

フィリーたちから奪った腕輪の最後は、
こうしてあんたの飯となるか……

そうまでして戦うのはなぜだ？
本能じゃあねえだろう。本能ならとっくに逃げてるはずだ。
野生じゃあない、理路のある愚かさ……
……忠誠か？

……わたしは、この世界から飛び立つことはできない。

けれど……君と滅ぶ気持ちにも、なれない