迷うことなく、ポポロ・ダンドリオンは綿毛の鍵を投げてよこした。
　無論、その表情は笑顔。

　そう断言するポポロの言葉は、どこかおかしい。
　ポポロが守護する対象はピアンタ・ディペントーラただ一人のはずなのに、今の言い方ではまるで仲間を守るようなニュアンスがあった。他の人間など、興味はないはずなのに。
　しかしポポロ自身にその自覚はまるでなく、言葉を続ける、

　そしてポポロはにっこりと笑って、芝居がかったお辞儀をしてみせる。

元々持っている性質と言うのは重要だ。
人に対し友好的なエンブリオだけではない。
力を貸す協力関係であっても、契約方法によっては寝首をかかれることもあり得る。

ニスイの契約方法はエンブリオに対し強制力を持たないため、信頼関係を築くことは強さに直結する。
そういう意味でも、狼のエンブリオたちはニスイと相性が良いのだろう。

しかしそれでは言いよどむ理由がないようにも思える。

喰い潰す方向まっしぐらである。

社長の言動にほんの少しだけ引っかかりを感じつつも、提案には二つ返事で了承した。