※前回のあらすじ※
教授がLv30になった天使を実体化させたぞ
やべぇなんかすごく怒ってる



「あっ」察しはついた。
よく考えて見れば怒らないわけがないのだ。天使である。
もう心当たりが多すぎて何が一番ダメなのかはわからないが、全体的に全部ダメだ。
逃げる算段を始めたスラントだったが、なんと教授は
「ぐふふふふふふふはじめましてじゃのう。なかなかの別嬪さんではないか儂は嬉しいぞ。
　これからの旅が楽しくなりそうじゃのう！」
更に油を注いだ。

「死になさい。」
言うが早いか天使は眉一つ動かさないままに光り輝く拳を叩き込んでくる。
即座に後ろに下がってかわした教授は、

「ちょ、ちょっと待ってくださいなんで僕の後ろに隠れるんですか！」
……事の成り行きを見守っていた鳴丸を盾にしていた。
ちなみにスラントは一歩先んじて部屋の隅まで退去している。
「いや、儂もさすがに死にたくないから」「それでなんで僕が！？」
などと言い合う二人だったが、天使が一切構うことなく拳を振り上げるのを見て一斉にあとずさる。

「チッ、躊躇なしか。あまり盾にはなりそうもないな。」
「最悪だこの人！っていうか天使さん！悪いのはあくまでこの変態でしょう！？僕まで巻き込むのはやめて下さい！」
そう訴える鳴丸だったが、帰ってきた答えは
「貴方も同罪です」簡潔かつ容赦無いものだった。

ナンデ！？という思いを全身から発散している鳴丸を一瞥した天使が口を開いた。
「この」
指し示すのも汚らわしい、という態度で教授を見やり、続ける。
「この男の行為を、貴方はどう見ていましたか？」

迂闊なことを言っただけで貫手で喉を突かれそうな気配の中、鳴丸は必死に言葉を選ぶ。
「え……ええと、なんというか、その唾棄すべき変態行為であると」
「わー鳴丸君、テンパッてガチ本音でてる」
「君等そんなに単位欲しくないのか」
まぜっかえして場を流そうとする教授たちには一切取り合わず、天使は冷たく断罪する。
「その唾棄すべき変態行為を、横で座して見つづけてきた貴方に、一体何を言う権利があると？」

それを言われると鳴丸には立つ瀬がない。
教授には口では敵わぬのみならず、立場的にも反抗はできぬ、と決め込んで
暴走するに任せて放っておいた面があるのは事実である。

とはいえいくらなんでも同罪は厳しい。情状酌量ぐらい認められても良いはずである。
そう思ってはいても、口には出せないあたりが鳴丸という男の限界だった。
「どうやら不満なようですが」
口には出さなくても、簡単に思っていることが外面に出るのも鳴丸の限界である。
「このような……これほどの下衆を産み、育て、しかも人を教え導く立場につけ、なおも掣肘すらできぬ、というなら」
言葉とともに天使が拳を振りかぶる。
「もはや人間という種そのものが失敗作と言わざるを得ません」

あんた一体何をしたんだ、という視線が鳴丸（とスラント）から教授に注がれる。
天使も本来の標的である教授に視線を移したが、そこで教授が口を開いた。


「うむ、やっといい名が浮かんだぞ！」

「は？」
脈絡のない会話に相手がついてくるより先に、というよりついてくるか無視するかを決めるより先に教授は話をすすめる。
「名前じゃよ名前。契約によりエンブリオには名を与えることができる。
　契約主とエンブリオとの繋がりを強固にするための、唯一無二の名じゃ」

確かにエンブリオ契約にはそのような形式も存在する。実質的な意味は無いが、
エンブリオ側に拒否権は基本的になく契約主の一存でその名を定められるものであり、
与えられた名はいかなるものであっても正式にそのものの名前として扱われる。
それだけといえばそれだけであるが、エンブリオと契約主の信頼関係のためにはセンスが問われるところであり、
つまるところ教授がそれを言い出す時点で不安しかなかった。

「待ちなさい。貴方、私に一体———」
「我が天使よ！今日からお前の名は『Lechery Pink』じゃ！！！」
「Le……！？」その言葉を聞いた天使が自失した瞬間、3人がかりの攻撃が天使を貫いていた。




会話の脈絡をすっ飛ばすのはこの教授の悪癖だったが、概ねが意図的なものである。
主導権を握り、自分の意図を必要な時まで隠すためにこの手のレトリックを駆使するのはよくあることであり、
当然ゼミ生はそれをよく知悉していた。
『教授がワケのわからないことを言い出したときはたいてい碌でもない行動が後に続く』
ことぐらい理解していなければやっていられないのだ。

「うむ、まさに長い付き合いがなせる連携だったな」
「話しかけないでください。今僕は自分が最低なことを実感して傷ついているんです。主にあなたのせいで」
人生はそこからが始まりなんだがなあ、などと嘯く教授、
いちいち気にするから疲れるのに、と平気な顔のスラント。
帰ってきた日常が日常であることに疑問を抱きつつも、
一揆参加以来最大の危機をやり過ごし、一息つかずにはいられない鳴丸であった……












なおlecheryとは淫乱の意である

声が聞こえ、振り向くと変態教授が追走しているのが見える。後ろには悶絶しているエンブリオが・・・

そういうとサニーはプララを殴る。

そう叫ぶと３人に風が吹き荒れる。

勢いに気おされそうになっている。

首を振って気を取り直す。

何となく語られたやたらと真面目な目的に胡散臭げな眼を向けた。

サラッと愛人に関しては却下した。