そのかいなが抱けるものには限りがあって、
そのせなに負えるものには限りがあって、
その限りの中に何を詰めるかが人を分ける。

それは至極明快で、単純な理論。


そのかいなで繰るは何か。
そのかいなで抱くは何か。

そのかいなを伸べるは何か。
そのかいなを統べるは何か。


選ぶ。選ぶ。
全てを掴むにはこの手のひらは小さすぎて、
全てを抱くにはこのかいなは細すぎて、
全てを負うにはこのせなは薄すぎて、

だから、寄り合うのだと、そう思う。


「決めたわ」
「………」
「…ありがとうね、っていうのは正しいのかしらね」
「さあ、どうだろう。でも知っていたよ、レイ。私の力はもう十分なのだね」
「ええ、そうよ」
「…ふ。童達の面倒を見ずに済むのは助かる程だ」
「そう」

漆黒の大狗は笑った。
少なくとも、そう見えた。

「然様なら、レジー」

了承の意を得て準備し始める。
肩に担いでいた黒い箱を下ろし、両手を握り合わせて唸ると、
直方体の紐やベルトに覆われていない側面がパッと光ったかと思うと七輪と木箱、その他調理に必要な道具が現れた。
河童は腰を下ろし、ちょいちょいと座るよう促す。

河童のちゃちゃを返しつつ一通り準備を終え、
焼けた網の上にネギとマグロを交互に差し、塩コショウをまぶした串を何本も並べて炭火を煽る。

にかっと笑うと、半生の串にかぶりつきつつ、一本差し出した。