トートの奴、また派手にやってくれたもんやなぁ。
ブレーキペダルは壊れるなんて、初めてやないやろか？
ワイ自身が止まればええ話やけども、ひま見て直しとこか。



[SummerVacation]

夜の海は、あれやな。
この静かーな雰囲気がええ感じや。
木陰で停まっとるが一番やな。







・・・・・・・・。
・・・・おっちゃん、今頃どうしてんやろなぁ・・・・

　海辺の近くの防風林の間を抜ける、細い道。
　そんな場所を安全運転で突っ切っていたトラックの目の前に唐突に脇からドサリと音を立てて地面に転がったのは、人でも丸太でもなく偶然道にはみ出てきた竜の尻尾であった。

　そのままでは轢くなり撥ねるなりすることは確実であろう、そんな危機。しかもブレーキが壊れるという災難まで振りかかる始末。

　……しかしそれは搭乗者であるベルの機転と、トラックに宿るAI自身による必殺技にて無事回避されるのであった。

　頭を下げるのは尻尾の主である青年である。先ほどまで竜の姿で惰眠を貪っていたのだが、ブレーキ音で目覚め、状況をベルの説明によって知ったらしく申し訳なさそうに尻尾を縮めて頭を下げている。

　遠い目で視線を送る先には、地面にぶっ倒れているトートの姿があるのかもしれない。