シェリナ……なぜ、君の体は4つに分かれているんだ……？
　なぜ、頭と両手と胴体とが、繋がらずにバラバラになっている……？
　なぜ私は、血塗れのギロチンがそびえる隣で、誰も居ない深夜に、片付けられもせずハエのエサとなるのを待っている死体を、降りしきる雨の中でじっと見なければならないのだ……？
　王が、ネクターを集めろと言ったのにそれに協力せずネクターを隠したからか……？
　あと1ヶ月で産まれる筈だった命に、幸福あれと願ったからか……？
　それが理由だと言うのならば……王とは、なんなんだ……
　そんな王に媚び諂い、我が子の幸せを想う母親を嘲り笑いながら断頭台に平伏せさせる兵士達はなんなんだ……

　私は、研究者だ。畜産業者や保健所で動物の命を奪うことにはどうしても抵抗がある。処刑人も同様だ。そんな人々の負担を減らそうと、業務を代行するホムンクルスを造る為に日夜努力していた……
　民間の屠畜場などはもちろん、国にも仕えてきた。死刑執行人の精神的負担が大きいからと、感情なく、よって負担も感じないホムンクルスを提供した。
　だが、その国は……王は……何をした……！
　今回の「裁判」では10人を越える受刑者が刑を執行された。しかし、その場にはホムンクルスはいなかった。その理由は一つ。「精神的負担がなかったから」だ。兵士達は笑っていた。家の中に侵入してきたムカデやゴキブリを上手に叩き潰して殺すことができたなら、多くの人は「よし！」とガッツポーズをするだろう。「それと同じ」なのだ。

　————きけば、各地で王に対する不平不満をもてあますものは多数居るらしい。このまま時がたてば、その怒りは奔流となるだろう。その前に、その前に完成させなくてはならない




さぁ、あの板を持ち帰ろう。シェリナや多くの人々の血が染み込んだ、あの断頭台の板を。雨にうたれてなおその赤黒さを微塵も失わない、呪われた板を
すべては、すべてはコロスために——！

今の夢は……。
最後に見えたのは、私の製造計画の中心人物であったアルキース博士でしたね。
そういえば彼は、いつも私の調整を気にかけていましたが……こういうことでしたか。
昨日、私は戦った新王側の者を見逃しました。それに対するブラド＝リリスの返答、といったところでしょうか

…………

赤毛の仔犬は、服の裾でごしごしと目元を拭った。

仔犬は、その小さな手を目の前のスカルの胸にそっと伸ばした。

手のひらを、そっと心臓の上に置いた。
・・・・その鼓動を確かめるように。

仔犬が優しく胸を撫でる。
そこには確かに鼓動があり、温かな熱がある。

仔犬は、少し背の高いスカルに向かって顔を上げ、目を細めて微笑んだ。

本当に嬉しそうに、幸せそうに、仔犬は微笑んだ。

仔犬は、とても楽しそうに微笑んでいる。

　

　それがわかれば自分が何者なのかわかるだろうか

　自分の思ってる自分のイメージに全く合わないなと思うのであった。

経緯を聞いて、ふん、と鼻息を一つ。
スカルに対してではなく、新王に対してのものだろう。
彼女はブランチマン等の一部の例外を除けば、新王勢力に対して良い感情は持ち合わせていなかった。

若干の皮肉を交えながら、まずそう答える。

問いかける声は、実に楽しそうだった。

さて、ケルベロスの召喚について説明を聞けば、呆れたような声で

と、答えるのだった。