私は本当に奇跡なんて信じていたのだろうか。
そんな都合の良い話を信じていたのだろうか。

きっと、あまり信じていなかった。
でも、ほんの少しだけ……一縷の望みを持っていなかったかと言えば、それもやっぱり嘘になる気がする。

そう、ちょっとだけまた生きられれば良いな……なんて。
そういう風に思ってたんだ。

そう、私は確かに受肉し、再誕していた。
情報としてあの島に保存されていた魂もこの胸にあって、
食い込んでいた鎖も解けて周囲に散らばっている。
でもその時間が早すぎる。
だって、今はあのイシカリさんに伝言をしたあのそのまま続きなんだから。

いえ、だって、こう……あれじゃないのかな。
一回身体が消えてあの島に戻るとか……そ、そういうですね。
なんの感慨も無く普通に此処にいるだなんて。

まるでお別れみたいな雰囲気を醸し出していた私恥ずかしい子ですよこれ……。
グレンさんもイシカリさんもこっちを見ないで……っ！

はぁ、仕方ない。
文句は言わない事にしましょう。
これ以上を望むのは贅沢が過ぎると言うものです。



見ればグレンさんは微妙な顔をして手を差し出してきている。
最近少しだけ分かる様になったのは、彼はその表情が内心をそのまま表している訳では決して無いという事だ。

だから、せめて私位は……たまには感情をそのまま出そうと思う。

私はなるべく今の感情を表情に出す。
そして手を差し出してこう言うのだ。

満の影が動き出す