土くれの巨人のエンブリオはぼろぼろと崩れて、それらを繋ぎとめていた黒い靄はただそこにたたずんで、じわり、と濡れた土へと染みていった。
私は森を後にし、加護を受けることで敏捷性を得ることが出来るとされた妖精を従える。ふと、私が使っていた呪われた刃に手を伸ばす。神経を啜られるような悪寒は全く以前と変わりがないようで、その悪性はおそらく、同じように堅牢さを司る多頭の毒蛇へとうつり変わったのだろう。

森は広がっている。

呪いは品や土地、人でさえを乗り換えてゆく。
そうしたありように従わない限りは御することもまた不可能である、と師は私に教えた。
私を苛む彼の姿の影は、ただ何もせず私を見ているかのようだ。
私は彼がそうするのを止めることは出来ないし、彼もまたそうする以外を失くしているのだろう。
なぜなら彼はそうして殺されていったようなものだからだ。

この森の葉が陽光を遮る天井は、頭上に広がっている。
故郷は湖畔の村だったことを思い出す。湿った土の香りも余計に想起させる。