「傷が治りやすい」と書いたことが確か数日前にあった。
あれはどうも認識違いのようだった。ルシウスのケガはそう早くは回復していないように見えるし、ベアトリス・ベロニカについても同様だった。私は先日書いたように傷を負いやすい戦いをしているにも関わらず次の日には大体が完治しているということを考えるに、自然回復の度合いの違いは間違いない。彼らとの違いは契約しているエンブリオの違いくらいなものだ。
ゴーレム。アダムスと名づけたゴーレムのエンブリオはその姿をもアダムスに変え私に付き従っている。亡霊のように佇む姿を私は一人で居るときに何度か見ている（この契約は運動能力やこの地の魔法などに影響を及ぼしており、その契約関係を限界まで高めた人間はエンブリオ自体を具現化させるのだという）。ゴーレムがこの治癒能力との関連先であるのなら、納得のいく例は確かに身近にある。
ベロニカはこの世界に来てから元々の人工生命としての肉体をある程度操作しているように見える。当初私は刺激することを恐れて起動コードを書かず、生身で戦闘に参加させるよう指示をした。彼が人工生命として戦闘を行う様とゴーレムと契約した私との間に類似を感じる。恐ろしい速さで繋がる骨折、裂かれた皮膚の再生。今の私はあのような状態なのだろう。

アダムスは私に捨て身の戦法を続けろということを示しているのか。

通りすがりの若者が、ふと盤に目を留める。

若者はチップにと、買い物袋から冷えてるビール瓶を置いていった。 1D6 = 4 ( 4 )

天幕の外から声が聞こえる。

レイジがそう言って小石を拾い上げると、それは甲高い音を立てて消えた。