■平原：大草原にて

　白いものがまざる草原をゆく。
　昨日の雪なのか、霜か、さくさくと音を立てる下駄の下。
　寒さを慰めようと片手に息を吹きかければ、やはり白いものが視界に流れた。
「…冷えよる、なぁ…」
「冷えるわねぇ」
「冷えるねー」
　…本当に、そう思っているのかどうか、と2人を眺める私の目が少々胡乱になってとて、致し方ないだろう。

　白衣先生な真那霞は、夏も冬もさほど衣装に変わりがない。
　季節の移り変わりに無頓着だというのでなく、必要がないということなのだろう。
　聞いてみたところ、夏はひんやり、冬はあったか仕様が仕込まれているという。
「今すぐアンタを抱きしめたい」
　などと口走りそうになったが、周囲にキラキラしてるデバイスが一斉にこっちを向いたらどうしようかなと、やめておいた。
　戦闘における常の頼もしさを眺めていれば、気温からよりも優先して身を守らねばならないものがあると私にとて容易くわかる。
　…その空調システムは、半径何mまで有効やろかと、じりじりと距離を測るくらいは無害だろう。
　無害やで？と誰にともなく言い訳を飲み込む。

　視線を転じて、歌い手桃歌は、これはもう、若い、という人種なのだろう。
　暑い頃には暑そうにしていたし、今も寒さに耐える動作を繰り返しているようには見える。
　ただし、露出度がその対策に全然お供していないだけで。
「お洒落は気合だよ！」
　と拳を固める様子などは微笑ましいが、見てる方にも気合を必要とさせるのはいかがなものだろうか。
　見なければいいのだろうが、それでも目を惹いて止まない程度には白い肌は眼福だ。
　もこもこしていても、それはそれで可愛らしいのだろうけども。

　淡々とあるいはきゃっきゃと先を往く様子に微笑みたくなる、感情は気温よりは暖かだ。
「頼もしいもんやな」
　息を吐きかけるついで両手で口元を隠す。
　眼鏡が曇ってしまうが、仕方ない。
　笑っているのが奇妙に見えなければいい。
「そろそろ、前はまかされとこか」
　遠目にちらつく影を見とめて、眼鏡を外しておく。
　改めて、よろしく。
　そんな言葉の代わりに、二人の肩に片手ずつの体温を預けた。

System Message : M.E.E.駆動...出力...30%...40%...50%...M.E.E.戦闘出力確保......

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