皆で同じ卓を囲み、同じ時間に食事をする。
メルンテーゼに降りてからそれほど日はたっていないが、もう随分とそうして長い間共に過ごしているように錯覚する事が幾度かある。
こちらでの生活が密度の濃いものだからだろうか、少なくとも向こうに居る頃よりは長閑な部分もあるのだが。


『——森で白虎の目撃情報が——』
『——水辺を進んでいた人達が城内へ続く道を発見して——』
『——水辺と言えば何やらでかい烏賊が道を塞いでおる場所があるらしく——』
『——あ、そう言えば花火大会があるんだって、残念だけど日程の都合が合わないね——』


情報交換を兼ねた他愛も無い話をしながら料理を口に運ぶ。
同行者のうち年少のふたりは決してがっついている訳ではないが、やはり喋るよりもぐもぐと口を動かしている方が多いようだ。
特に好物の馬鈴薯を多めによそってもらったらしき少年の方は嬉しそうな笑みさえ浮かべている。

やはり子供が美味そうに飯を食う様は愛らしい、そう再度認識する。
そう言えばもとより顔見知りの者達ではあったが、共に食事をする機会にはあまり恵まれなかった事を思い出す。


（戻るのはいつになるかはわからぬが、彼方でもこうして同じ卓を囲む事が出来れば良いのう）




食事を終え、片付けをしようと立ち上がったところで温厚そうな印象を受ける黒髪の青年——ラザラスから呼び止められる。

「ああ、今日はこの後別行動になりますからお弁当を作っておきました。後でお渡しします」

……そう言えばいつも料理を任せている２人、ラザラスとフィーはどちらも平原調査組に回った事を思い出す。
しくじった。これは如何してでも早く調査を終えて合流せねばなるまいて。

(ちら、とスーノの方を見る)

初老の見た目の、落ち着いた佇まいのローブを纏った紳士が話しかけてきた。

突如現れた人影（・・・の声は男のように聞こえる）が、場違いな発言で雰囲気を壊した。

そう言いながら手元の大槍をコツンと叩いてみせる。