「ん？お弁当？」
「はい、僕ら2人が同じ班になったので２班の方にどうかな、と。」

それもそうか、と考えた。
そういえばいつもは僕がその場で作ったり作ったのをもっていったりしていたけど、
今回は料理できる２人が同じ班で同じ行き先なのだ。

「でも何作ろう・・・？」
「２班の方の好みはフィーさんが把握してるのでは？」
「まぁそれはそうだけど。」
悩むものは悩むんだよ。実を言うと僕は献立を考えるのが苦手だ。
うんうん考えてるうちにラザラスは既に調理に取りかかってた。
いい主夫になれるな・・・とその後ろ姿を見てぼんやりと考えた。

せっかく弁当を作るんだ。何かサプライズを仕込んだら楽しいんじゃないだろうか。
けれどレイに仕込むと怒られる気がする。だからといってスーノにやっても怒られる。
むしろスーノの方が怒りそうだ。レイの心の広さを見習ってほしい。
でも怒ったら面白いのはスーノの方だ。
一人でうんうんと頷いてるとラザラスが不思議そうな顔をしていたけど気にしないことにしよう。

「豆腐ハンバーグ・・・」って一種のいたずらになるかな。主にスーノ向け。
「ヘルシーでいいんじゃないですか？　レイさん……というか、女性陣が喜びそうですね」
そうラザラスの声が聞こえた。
喜んでもらえるならむしろ本望だ。大豆っていわば畑の・・・
「・・・そうか、大豆って畑の肉だしね・・・」
「？フィーさん？」
「ラザラス、豆腐を肉みたいに見せるには色紅とか使うべき？」
「フィーさん？？」
「でも色紅つけすぎると赤すぎるよね！」
「そっちですか」

すごいあきれた顔をされた。
僕は少し弁当に楽しみを持ってほしいだけで断じていたずらをするわけではない
……といってもこの顔では信じてくれそうにない。まぁ実際違うし。
それでも僕だってここで折れるわけにはいかない。
これでも負けず嫌いなのだ。どうでもいい方向に向いてる気しかしないのはこの際置いておいてほしい。

とはいえ
「とても。美味しい。豆腐ハンバーグのレシピを。知っていますから」
今回のラザラスは強敵のようだ。

ふうっと一息つく。
「わかった、わかったよ。僕の負け。食べ物で遊ぶのよくないし。」
「わかってくれましたか……って遊んでるつもりだったんですか？」
「いや、別に。食紅まではやりすぎかなって思っただけ。」

皮むきされたじゃがいもを取って眺める。
「パン焼くからハンバーガーにしよ。食べやすいし、何より僕が食べたい」
「フィーさんの都合じゃないですか、それ。」
「まーそれもそうだけど。それとさ、あんな砂地でお弁当箱広げてたら砂はいっちゃうかなって思っただけだよ。」
そうラザラスに苦笑いを向けたのだった。

コロッケとハンバーグの2種類作ってピタにするのもおいしいよね。
と独り言を言っているとラザラスが不思議そうな顔をまた向けた。

「……フィーさんほんと、サンドウィッチの類好きですね。」
きょとんとした顔でラザラスを見る。
「んーそうだね」っと苦笑いを向ける。
でもね、と言いかけて声を止める。
「…フィーさん？」
「なんでもない！ほら、つくろつくろ！寝る時間なくなるよ！」

ぼくはただの模倣に過ぎないんだよ。その言葉は声にはならずに消えていった。

（手袋を着用する