道を妨げるものを倒し、その力を簒奪する。
今まで似たようなことは幾度も行ってきた。
けれど、その相手が違う事でこうも質が変わるものか。
豊かな世界とは、今更ながらに間違いではないようだ。

この世界のエンブリオと契約し、外でもその力が使えれば。
或いは、長旅で知り合った幾人かは救えたのかもしれない。
治癒の力が働かぬ土地で生まれたあの子を、死神の鎌から救えた
のかも知れない。
人為的に作られた種族として生まれたばかりに、多くの能力と、
機能不全を併呑していた彼を楽に出来たのかもしれない。


だが、仮定の話は空しい。
私はそれら全て、過去に置いて来た。
自分の目的のために巡った世界で、掌で救えるものなど幾ら有ったろうか。
秋空に散り行く枯葉の、偶然手の上に乗った一枚分程度だろうか。

そして、それでも良いと私は諦めた。
自身すら救えずに他人を救うなど、笑わせる。
自己中心的な嗜好が他人と同調した時、手を出せればそれで良い。
救うと約束するのも、出来ぬと嘆くのも、傲慢なのだ。
良いと考えた結果にさえ近付けさせれば、言葉は要らない。

今は只進むのみ。
信念の鬩ぎ合う中で、足を止めた情動は生き残れない。
　

その話が記憶を無くした頃の話かどうかは判断はつかないが、別人の様な人では無いらしい……それと幸か不幸か、少女は全裸の姿を知らない様子。

少し震えた声で目の事について語る、体調を悪くするような物では無いらしいが……彼に知られるのは嫌な様子。

深く、深く頭を下げる。

リリエッタか、と呟き呆れた口調で男は言葉を続ける。

フフ…と笑って見せた。

中身も大事という発言に同意とばかりに頷いて。「お目通し適うのならば、見てみたいなぁ」と率直な感想も吐露したりして

急に話題を向けられて、慌てふためいたりもして。
「相手の事もきちんと労わってくれる方とか…」と狼狽しながらも口にした所で冗談としって、余計に恥ずかしくなったようで顔を下に向けている…

有難うございます、と口にして頭を下げる。その姿が相手にどう映っているかは定かではないが、他意はないのだろう。顔を上げた時には心底嬉しそうにしている表情を称えていた。。。

「金髪でゴーグルのあの人」、と告げられて脳裏に浮かぶ、一人の男性の姿。
思わず明るい声が出る。

腰に手を当てた相手を見て、おお、と呟く。

キリっとしたような顔でキメ台詞っぽい事を告げる……が、その表情がそのままで固まる。

『ゆ ら り』 、とあなたの方に手を伸ばす。……頬を引っ張る構えだ！！

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　髪を整え、相手を静かに見据える。

　　　　　　　炉に火を入れ、ワイングラスを溶かして型に流し、筒に息を吹き込んで形を整える

　　　　　　　嬉々として火口に火を噴かせ、熱石を更に熱して鎚で鍛える