魔女のいうメルンテーゼのなりたちが真実なのかどうか、判断に足る材料はない。だが、もし彼女の言うことが本当のことだとすれば、彼女はこの世界の仕組みを変えるほどの力を持っているということだ。

魔法というものは、理論上は不可能なことなどなにもない。ただ、より高みを目指せば目指すほど、当然ながらより困難となる。この世に生きとし生けるものである以上、魔法を操るモノがどのようなものであったとしても、いずれ魔法ですら実現が困難な壁がたちはだかるものだ。

世界の仕組みを変えるとなると、僕のように魔法によって一つの生命をつくるどころの比ではない。生命もまた、ある意味では世界といえるかもしれないが、本当に世界そのものとなると、規模が違いすぎる。いったい、どうしたら世界を変えることが実現できてしまうのか、いまの僕には想像もつかないことだ。

たった一人のその日の気分と、さじ加減で、世界の理を変えたり、はたまたなかったことにしてしまったり、そのようなことは本当に可能なのであろうか？

だが、彼女の前に対峙していると・・・彼女の言葉を、信じざるをえなかった

エンブリオの火によって焼き上げられてゆくブラウニーを覗き込みます。
それはもう、前髪が焦げてしまいそうなほどに。

他人事のように言う。

どんなにか素晴らしいかと。