妖精の羽には多様な種類が存在する。

妖精という種族は多くの世界に存在しているが、世界が違えば妖精の羽の形状も大きく異る。また、同じ世界であっても、妖精の種族によって羽の形状は異なっている。妖精の羽でもっとも多いのが、昆虫の翅（はね）に類似した形状を持つものだ。特に、チョウやトンボの翅に類似したものが大多数を占める。昆虫の翅をもつ人型のことを妖精だと思う人すらいるほどである。

ちなみに、羽を持たない妖精も数多く存在しているのだが、特に近年観測される妖精は羽をもつ物が多い。羽を持つ妖精が増えている理由として考えられるのは、妖精の姿は妖精を観測する社会全体が持つイメージによって大きく左右される性質から来ているものと推測される。妖精は羽を持つものだと思う人が多ければ多いほど、妖精もまた羽をもって姿を表すのだ。著名な絵画にチョウの翅をもつ人型の姿が描かれていたり、よく知れ渡ったおとぎ話に出てくる妖精がトンボと同じような羽を持っていたりしている影響もあるのだろう。

ソラメロなどは形状としてはトンボの翅とかなり近い。そして、今回妖精の森で遭遇したパピヨンはまさしくチョウの翅を持つタイプの妖精だ。パピヨンと呼ばれていることからもわかるように、その羽はチョウの翅をそのまま持ってきたような形状をしている。チョウの翅を持つ妖精と一口に言っても、形はチョウの翅でも薄く透き通った羽を持つ妖精も多いのだが、パピヨンはチョウの性質をほとんどそのまま引き継いでいるようだった。蝶の触覚のようなもの

とりあえず、そのパピヨンと呼ばれる妖精の1個体と無事エンブリオ契約を結べたので、この世界の妖精の一端をより知ることができそうだ。

蜘蛛が人間と子をなすことそのものが異常なのです。
その異常の基が、自然の中にあるようなものであるはずがないのでした。

我流で生物を作り出す事の危険性について語られれば、頷いて同意を示す。

何か嫌な思い出でもあったのか、はあ、とため息を一つ零した。

魔王、という事に驚かれれば。あれ？　と眉を上下させた。