あらすじ

犬と少年が所属する組織の命令に従いこの世界にきて翻弄されつつも
何とかギルドメンバーと攻略をがんばってるところですが
そろそろ30日が経ちますが帰れる目処が立たなくなっててやばいですね！って話から始まります。


「今日で何日目だっけ、白雲」
「29日目、だな」
「……こっちの世界の日程とあっちの世界の日程がどこまで違うのかも考え付かないしなー…」
「そればっかりはどうしようもないな。しかしたくましくなったよなお前」
「嫌でも慣れるよ。あと白雲がどんどん強くなってて怖い」
「そりゃ俺の枠はほぼ解放されてるし、補助エンブリオどんだけ追加されてると思ってるんだ」

白雲はふわふわと今までどおりに傍に浮かんでいる。
だが、そのふわふわした身体の横には光が色々浮かんでいる。
そう、これまで倒した上で契約してきたエンブリオたちだ。
エンブリオの契約に関しては白雲に完璧に一任してる。俺にはわからないし。

「こうやって考えるとやっぱり俺は崇徳さんよりなんだよね…」
「あー、お前完璧物理だもんな。でも、言っちゃ悪いけど俺物理は出来ないわけよ？」
「…え？」
「お前がぶん殴るための補助はしてるけどさ」
「……え？」

つい、自分の手を見てしまう。
白雲の力を借りて、時折殴ることはある。
戦略の都合上一人で敵に立ち向かうこともあるからだ。

「お前光力は確定で持ってるだろ」
「……マジで？」
「おう。最近その辺りの補助は俺してねぇもん。多分どっちかって言うと優歌様寄り」
「……えー？」
「杖、俺らの世界よりに強化しないとそろそろお前の力についていけなくなるかもな」
「…………そうなんだ」
「ま、お前の力はそのうち開花するだろうな、って話は良くしてた」

その言葉に、俺は心底ほっとした。
薄暗い記憶に、思わず呟いてしまう。

「…出来損ないじゃなくてよかったよ」
「お前、それ誰かに言われたのか」
「……スポンサー？だっけ。たまたまあってね、何回か」
「よし、帰ったら泰遠様に報告しとく」
「やめて！？」
「嫌だ。全員でフルボッコにする。物理的はまずいから精神的に」
「いやおねがいだからやめて！？さすがに！」
「ダメだろ。お前が息子だし、発覚しなくてもお前が泰遠様の手助けしたいって思って
ずっと来てたのくらい俺は知ってるんだよ」
「……」
「それに対してあいつらがつべこべいう資格はない。確かにスポンサーだけどな？」
「………」
「泰遠様も崇徳様も、志織さんだって何も言ってなかった。
お前には一杯家族が居る。それだけだったはずだろうが！」
「……うん」

若干お怒りモードの白雲は、ちょっと姿が変わってる。
大きくなって、もふもふがなくなるこの姿は、あんまり好きじゃないっていつも言ってた。
それでも、怒ってるとやっぱ制御利かないんだね、ってちょっとずれた事を思った。

「正直、今回のこと、志織さんは最後まで反対してた」
「……そうだよね」
「お二人だって…心底悩んで決断したんだ。
優歌様と泰遠様の予知がなければ、自分が行きたいって崇徳様も言ってたくらいだった」
「……」
「お前が前線に出ないことを望んでた。志織さんもな、優歌様もな」
「…だから、着いてきてくれたんでしょ？」
「そりゃお前、俺が補助に着くの決まってたんだから」

ちょっとおちついたのか、ふわ、っと光が散って、元の子犬にもどって、足元に座った。
言われた言葉が頭で入ってきてすぐ白雲を凝視する。
どういう意味だ。

「…え？」
「お前が、高校卒業したときに着く補助は俺って内定してたの。
じゃなきゃ俺がお前と志織さんに縁あるわけないだろ？」
「………何その驚愕の新事実」
「お前が生まれた頃くらいかね？沙希様と泰遠様の予知でな。俺も組織に入った頃くらいだったけど」
「………うっわー…」
「じゃなきゃ今まで俺が優歌様の部下として単体で活動してるわけないだろうが？相方なしで」
「…言われてみれば！」

正直顔を覆わざるを得ない。マジで。
力闘の掟として、一人で活動することはないはずだったのに。それが白雲みたいな奴であったとしてもだ。

「だからこそ今回の話の予知が出たときに、俺も泰遠様もとうとうかとは思った」
「……そっかぁ…」
「光力はともかく他は、帰ったら確認かな」
「そうだね、この世界じゃ確認できないし」
「予知はま、あの人たちが特殊なだけで引継ぎは微妙だし」
「あれって完璧に…」

その瞬間、どさ、っという音がして、重いものが振ってきた音がした。

「あー…」
「着地失敗ですね、優歌」
「ポー？！優歌姉さん？！」「ポーさん、優歌様！？」

*****

“命はめぐる。陰り迷いし白き獣に、愛しき子が救いとなる。互いに助けとなる、対となる”

いらっしゃいませ前々期キャラ。しばらく滞在します。