あるところに、エルフの女の子がいました。

エルフはとてもとても恥ずかしがり屋さん。

森の奥深くにある家に閉じこもってばかりで、ちっとも外に出てきません。


「絹のように滑らかな髪なんだ」
「宝石のような目しているのよ」


エルフに会ったことのある森の住人は口を揃えてそう言います。
噂を聞いた者は一目見ようと森の奥深くまで


「おうい、出ておいでよ。」
「仲良くなりたいんだ」


エルフはやはり出てきません。



ある日、世界を廻る音楽隊・シェディ楽団が森を訪れました。
シェディ楽団のメンバーは恥ずかしがり屋のエルフのことを聞きました。

「大丈夫さ、きっと楽しい事があればすぐに皆と仲良くなれる」

うさぎの団長が指揮を執ると、楽しげな音楽が森中に響きます。
音楽に誘われて森の住民たちは歌い、花や木は踊りだしました。


それは勿論、家の中のエルフにも届きます。

「今日って、お祭りだったかしら？」

エルフはそっと、窓から様子を窺ってみました。

シェディ楽団の奏でる音楽で、森はとてもきらきらと輝いて見えました。

「さぁおいでなさい、お嬢さん！」
「大丈夫、あなたもこの中で踊れるよ」


そして、エルフの女の子は森一番の美しい歌声と踊りを見せたのです。

……

…………

………………

きょとんとした様子だったが、やがて、真剣な顔で頷いた。

躓かないようにするのではなく、躓いても、足掻く。

　

　すごいドヤ顔してる。得意げである。
　完全に調子に乗ってるぞこのイヌワシ。

　違和感に気付いたか、そう問いを投げかけた。