星屑の流れる小川に佇む少女が一人。
うつむき、素足投げ出すように浸している。

紫色の薄い生地を幾重にも重ねて作られた繊細な衣装が、健康的な小麦色の肌に淡い影を作っている。
さわれば崩れてしまいそうに柔らかな曲線を描く薄紅色の髪に隠れ、表情は良く見えない。


ふわり。
そよ風が、甘い色の髪を優しく揺らす。
桜の花びらをかき集めたら、少女の髪のようになるのだろうか。

穏やかな昼下がりのこｔ−−−



「ちっくしょぉぉぉー！またヤられたあああああ！！！」


少女−九−は吠えた。
怒りをあらわに足をばたつかせ、じゃばじゃばとものすごい勢いで水しぶきが上がった。

「わぷっ」

その結果、近くで寝そべっていた黒猫っぽい悪魔が水害にあい、急いで小川の反対側へ避難する。

「ぺっぺっ！・・・・・・あーあ、そのまま黙ってれば、割と儚げに見えるのに・・・・・・残念っ！」

少し離れた場所で寝そべっていた相棒は、やれやれと肩をすくめる。

「うっせー！駄猫！うあああああ、マジもう腹立つううう！！！」
「調子にのって一匹多く相手にしようとするから・・・・・・」

手が付けられない暴れ馬のように手足をじたばたさせる少女を憐れむような目で見る。

「オマエ誰の味方なんだよ！バカバカ！」
「そりゃー、ボクはボクの味方さっ・・・・わっぷふっ！」

思いっきり水をかけられる。

「なんでボクがびしょ濡れにならないといけないの。ひどい〜。」
「・・・・・・・そうだよな、小川はひどいよな！」
「小川って言うかイチジクが、みぎゃっ！」

さらに水をかけられる。
びしょ濡れで見る影もない。
猫型なのに濡れ鼠を体現している。

「いやー、小川はひどい！ひどいところだな、ねこぱっちくん！」
「・・・・・・・・」
「そこで提案があるんだが！」

びしっと指を突き付けられ、ねこっぱちは珍しく鬱屈した表情になる。

「オレは樹が大好きだ！大きな樹はもっと好きだ！いっぱいあれば、なお良し！」
「・・・まさか。」
「時代は森だよ！も・り！」
「・・・やっぱり。」

はぁーーーーーーっと深いため息をつくねこっぱち。
お構いなしにイチジクは仁王立ちで宣言をした。


「ということで、森いくぞー！」