『末妃伝』

〜プロローグ〜
大陸の約半分を治めた豊夏国二代・雨帝（うてい）の死。
彼は百を超す妃たちに囲まれ、看取られた。
その中に、最後の側室として娶られた維花（イファ）という少女がいた。
彼女が妃として認められる年齢になった時、雨帝は病に倒れ、死んだ。
維花は雨帝が、西の地に遠征した際に拾った金髪の赤子だった。
そして、その稀な姿から、妃になるべく育てられた。
雨帝は維花を実の娘のように可愛がった。

煌びやかな宮殿の一角に、妃たちは集まり、雨帝の遺産を分かち合った。
妃やその他の女達は、誰一人として雨帝の子を生さなかった。
後継には正室の憫（みん）が選ばれ、三代目豊夏国皇帝となった。
それをはじめ数々の宝や建物、領地が妃たちに分け与えられた。
しかし何故か遺言状に、最後の妃である維花の名前だけが載っていなかった。

嘘の子を連れてきた妃、
他の妃を酷く苛めた妃、
奴隷を喰らっているという噂のある妃…
悪事が目立ち離縁・放逐された妃たちの名も、
遺言状にはその名とそのために遺した宝が記されているというのに、
維花の名前だけが載っていなかった。

その事を憫帝に話したが、彼女は冷たくあしらった。
先帝が生きていた頃は、優しく母のように育ててくれたはずだった。
悲しみにくれた維花は、豊夏国を離れ、旅立とうと決心した。

ナナシは湯屋を案内しながら二人の様子を見て何かニヤニヤとしている！
どうやら何か勘違いをしているようだ。　※コミュメッセに続く