竹林である。

　謎の竹林。
　ある日、忽然と其処に現れ、迷い込むことでのみ踏み入ることができる。
　一度でも入れば、その後はいつなんときでも、願うだけで出入りできるようになる。

　聳える竹を両脇に、石畳の路を進んだ深部、開けた景色の中にぽつんと佇む一軒の古めかしい屋敷。
　ある者には懐かしく、ある者には異国情緒に満ちて見えるという。
　周辺には、竹垣に囲まれた庭、畑、その他様々なものが見てとれる。
　奥の間にだけは立ち入りできぬ空間が広がっているが、それ以外の場所への往来と利用には何の苦もない。

　——出現の時、場所、遭遇する相手。
　それらには、何の規則性もない。
　故知であろうが、なかろうが。
　何処に居ようが、居まいが。
　……目の前に、この竹林が現れたならば。
　誰彼構わず、出会い、迷い込むことができる。
　——これを目にする者は、誰であっても。

　ひとときの憩いに。
　仮の棲家として。
　幾らかの気配が、竹に囲まれた隠れ家を訪れる……

　……余談。
　設立者が、一揆中の拠点用に迷いの森的な隠れ家の生成を試み、呪文(ソースコード)の記述を一部間違え、木が竹になってしまったのが真相らしい。
　生成者当人以外、誰でも入れるようになっているのも、恐らくは、何か記述が間違っていたせいであろう……

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【photo credit】
　[photolibrary] http://www.photolibrary.jp/ より
　作品名≪竹林の小径ライトアップ≫

（「線香花火の代わりに」という宣言通り、スパークしている）

花火がパンパンに詰まった袋をドンっと地面に置いて

両手に水の入ったバケツ、更に両手に花火のストックを持っている。

彼は他の者の手伝いに従事しているようだ。

＞闇さん

＞ゼゼ

【竹林ず花火参加中】

花火に興じる皆の姿を、遠巻きに眺めている。
　時折、自前の徳利を傾けて、酒を楽しんでいるようだ。

　一緒になって花火に興じていた連れのゴレムから声が掛かる。

　そう言って酒をまた一口。
　この後もう一度誘われた時は。
　腰を上げて、彼もまた花火に参加したことだろう。

そう言ってまた身を翻し、勝手口を目指し駆けてゆく。
数秒の後、語らいの声にかき消され届かなくなるギリギリの音量で混ざったのは、
石畳に掛かった砂利を強く擦り付けたザッという音と「ひゃっ！？」という短い悲鳴。
……どうやら勢い余って滑りかけたらしい。

飲み物の時と同様、行きとは違いゆっくりと、水を入れたバケツを提げて戻ってきた。

　一発芸の規則は無いという話を聞いて、ゼゼさんを見た。
　周りを見た。闇さんを見た。もう一度ゼゼさんを見た。